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羽生結弦の忘れられない言葉「宮本武蔵に通ずると思いました」ピアニスト福間洸太朗が明かす“7年前の共演”で得たこと
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph byAsami Enomoto/JMPA
posted2022/08/02 17:12
ピアニスト福間洸太朗氏が忘れられないシーンの1つとして挙げた、平昌五輪での『SEIMEI』
「音楽、衣装、振り付け、構成の全てが素晴らしいですし、これぞ『羽生結弦』という感じがしますね。私がご一緒した2015年のファンタジー・オン・アイスで初披露され練習から間近に拝見していたので、個人的な思い入れも強いですし、その時から平昌五輪までどんどんスケールが大きくなるのを見ることができて、印象深いです」
一方で福間さんが忘れられないプログラムが、ファンの間でも語り草となっている、2012年にニースで行われた選手権で演じた伝説のプログラム『ロミオとジュリエット』だ。初出場の17歳羽生結弦は、SP7位から表彰台に上がり、世界選手権の日本人男子最年少メダリストとなった。あの日、彼の演技に誰もが心を奪われた。
「中盤でターンする際に氷に引っかかったのか転倒してしまったんです。冒頭4回転も決めて、そこまで順調だっただけに勿体ないミスでしたが、その直後に3回転アクセル+3回転トーループを綺麗に着氷されて、その瞬間、私は『この選手は只者じゃない!』と思いましたね。また、東日本大震災から約1年後のことだったので、倒れても最後まで諦めず最大限の力を振り絞って演技するという羽生さんの気迫に、勇気をいただきました」
ハビエル・フェルナンデスへの“気遣い”
演技ではないが、福間さんにはもう1つ心に強く印象に残る光景があるという。
それは2015年12月にスペイン・バルセロナで開催されたGPファイナルでの1シーンだ。この大会で羽生は、当時歴代最高スコアで史上初の3連覇を達成している。
「SPで世界最高得点(当時/110.95点)を更新し、会場が物凄い熱狂したのですが、その次の出番が同門、そして開催国出身のハビエル・フェルナンデス選手で、彼が集中できるように羽生さんが会場の皆さんに『静かにしましょう。ありがとう』という合図を送っていたんです。こんな気遣いができる選手を私はそれまで見たことがありませんでした」