フィギュアスケートPRESSBACK NUMBER
羽生結弦の忘れられない言葉「宮本武蔵に通ずると思いました」ピアニスト福間洸太朗が明かす“7年前の共演”で得たこと
posted2022/08/02 17:12
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph by
Asami Enomoto/JMPA
7月19日夕方、ファンやメディアへの感謝の言葉から始まった会見は、羽生結弦らしさにあふれていた。2015年に行われたアイスショー『Fantasy on Ice』で羽生と共演したピアニストの福間洸太朗さん(39歳)も、彼の“決意表明”に注目していた。
「今後は試合で演技することはありませんが、“プロスケーター”としてスケートを続け、自分の理想を追い求めるという“現在進行形”を強調された決意表明で素晴らしかったです。
フィギュアスケーターとして数々の神演技を披露されただけでも素晴らしいレガシーだと思いますが、五輪2連覇を成し遂げたあと、4Aという前人未到の大技に挑戦し続けた姿勢はフィギュアスケーターだけでなく多くのアスリートに影響を与えたと思います」
あの共演から早7年。当時のことは今も昨日のことのようによく憶えているという。
「一夜で覚えるのはなかなか大変でした」
「もともとショーでは共演する予定ではなかったのですが、ある公演で氷のハプニングがあり、修復作業の間に私がステージでショパンの『バラード第1番』を弾いたのがきっかけで、羽生さんの方から『千秋楽で僕とコラボしてもらえませんか?』と提案してくださったのです。こんな光栄な機会は二度とないと思ってもちろん快諾しましたが、彼の使用する音源のカット版を弾いたことがなかったので、一夜で覚えるのはなかなか大変でした。
また、彼にとっても何千回と聴いてきた音源と違う私のテンポ、間の取り方、音の響に適応するのは容易ではなかったかと思います。でも、エンターテインメント性の高いショーで、観客に最大限楽しんでもらいたいという彼の熱意から、良い刺激を受けましたし、楽しみながらチャレンジすることの大切さを学びました」
自らを“スケオタ”と公言するほど熱烈なフィギュアスケートファンでもある福間さんだが、世界各地で演奏会を行う多忙なスケジュールのなかでも、ネットやテレビなどを通じてではあるが観戦を欠かさない。
そんな福間さんが歴代プログラムのなかで最も印象に残っているのが2018年の平昌五輪を制した、羽生の代名詞とも言えるプログラム『SEIMEI』だ。