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羽生結弦の忘れられない言葉「宮本武蔵に通ずると思いました」ピアニスト福間洸太朗が明かす“7年前の共演”で得たこと
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph byAsami Enomoto/JMPA
posted2022/08/02 17:12
ピアニスト福間洸太朗氏が忘れられないシーンの1つとして挙げた、平昌五輪での『SEIMEI』
いつも自らの率直な思いを述べる羽生の言葉は、多くの人の胸の中に刻まれてきた。彼の数々の名言からはアスリートとしてのプライドと強さを感じさせる。
「誰に勝ちたいとかじゃなくて、己に勝った上で勝ちたい」
2019年世界選手権に向けたインタビューで発せられたこの言葉に、福間さんは、剣豪・宮本武蔵を感じたという。
「実は、宮本武蔵の『五輪書』の中に『今日は昨日の自分に勝ち、明日は下手の者に勝ち、後には上手の者に勝つ』という言葉があり、非常に通じると思いました。決闘やスポーツの試合は『対戦』する場であっても、プレッシャーやその時のコンディション、悪環境などに負けず、自分のベストを尽くすという意味でまずは己に勝つこと、常に謙虚であることが大切だということなんですが、これは私自身もアメリカのコンクールで優勝しデビューした20歳の時から座右の銘にしていることもあり、嬉しかったです」
「同じ日本人として誇りに思う」
2014年ソチ五輪でフィギュア日本男子初のオリンピック金メダリストに輝いた後、羽生はグランプリファイナル4連覇の達成、2018年平昌五輪では五輪連覇と、数々の偉業を成し遂げてきた。ただ、その過程には怪我の試練にも直面した。
だが、そうした逆境さえも力に変えてきた。その姿に福間も誇りを感じたと語る。
「どの試合でも自分の限界に挑戦してベストを尽くすという姿勢は素晴らしいと思いますが、平昌五輪前は足の怪我で試合を欠場され、復帰された直後の試合が五輪ということで、想像を超えるプレッシャーがあったかと思います。そんな中、現地に入ってからメディア対応なども含めて非常に冷静に臨み、ジャンプだけでなく豊かな音楽表現のある内容で感動的な演技をされ、金メダルに輝いたことは、同じ日本人として大変誇りに思いました」