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木村拓哉、綾野剛…なぜ『オールドルーキー』脚本家・福田靖は“2クール連続で“元アスリートの絶望”を描いたのか?
text by
木俣冬Fuyu Kimata
photograph byTBS
posted2022/07/31 11:03
現在放送中のTBS日曜劇場『オールドルーキー』。Jリーガーだった主人公の“セカンドキャリア”を描く今までになかった新しいドラマの制作秘話を脚本家の福田靖さんに聞いた
「僕にとっては『半沢直樹』の印象が強烈過ぎますが、とにかく大勢の人が見る時間ですよね。当然、失敗できない感はありますが、プレッシャーを感じたところで何ができるかわからないので、一生懸命やるしかない。
『オールドルーキー』はこれまでの日曜劇場にはないスポーツマネージメントものです。『半沢直樹』とはテイストの違うものに挑めたことは満足です。ただ、これがもしヒットしても考察ものが増えるようにスポーツものが増えるとは思えませんが(笑)」
唯一無二のオリジナルに対する自信のほどを窺わす福田さん。時代とともに変わりゆくドラマシーンの第一線を走り続ける脚本家が気がかりなことはあるのか。
「他人事ながら心配なのは、これから脚本を書こうと思っている若い人が『脚本家の仕事は原作を脚色すること』と思ってしまわないかということです。小説や漫画を描く人は僕と同じようにアイデアを考えて絞り込んで、取材して、そして悩みながら描いて世に出しています。ところが脚本家のなかにはその原作をもらって脚本にするだけでいいと思っている人たちもいる。視聴者の希望に寄り添って原作のまま作るならまだしも、原作を模写することが当然と思っていてオリジナルを書こうとしない人が少なくないんです。そんな状況に歯止めをかけるためには脚本家がオリジナルドラマを書ける機会がもっと増えてほしいですね」
一方で、時代の変化には良い面もあることを指摘する。
天才子役・芦田愛菜の出現ですべてが変わった
「2004年に元野球選手が少年野球チームの監督になる『ワンダフルライフ』を描いた理由の1つは芦田愛菜ちゃんの出現によって子役ブームがあったことです。本当に愛菜ちゃんの出現以前と以後ではドラマシーンは全く違うと思っています。
『ワンダフルライフ』での少年野球設定はたくさんの少年たちを出すためのものでした。けれどそうそう愛菜ちゃんのような天才子役がいるわけもなく、中には台本とはまったく違うことをやって大変だったこともある(笑)。その点、最近はしっかりした演技をする子役が多い。『オールドルーキー』で主人公の娘を演じている稲垣来泉さんは現場からもとりわけ素晴らしい」
稲垣来泉は朝ドラ『ちむどんどん』でものびやかで叙情性もある演技が注目された子役である。考察ブーム、子役ブームとドラマの世界も移り変わっていく。これからどんなドラマが生まれるのか見逃せない。
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