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木村拓哉、綾野剛…なぜ『オールドルーキー』脚本家・福田靖は“2クール連続で“元アスリートの絶望”を描いたのか?
text by
木俣冬Fuyu Kimata
photograph byTBS
posted2022/07/31 11:03
現在放送中のTBS日曜劇場『オールドルーキー』。Jリーガーだった主人公の“セカンドキャリア”を描く今までになかった新しいドラマの制作秘話を脚本家の福田靖さんに聞いた
福田さんは「基本的には犯人探しものに興味がない」と言う。東野圭吾さんの人気ミステリーの映画化第3弾『ガリレオ 沈黙のパレード』も公開を控えるが、福田さんがこれまで手掛けた『ガリレオ』シリーズはミステリーとはいえ犯人探しではなく犯罪に至るまでの人間ドラマが醍醐味だった。
「僕の妻は一緒に映画を見ると始まってすぐに『犯人わかっちゃった』と言いますが、僕は全然わからないんですよ。推理するよりもその場で起きていることをただただ追いかけていくタイプなので、あらかじめどれが伏線か気づくことができなくて(笑)。脚本を書くときは当然、伏線を張っているんですけれどね。昔からフラグやドンデン返しという脚本上の仕掛けにはあまり興味がないんです。
僕は意外な仕掛けで驚かせることよりも、俳優さんがお芝居しがいのあるものを書きたい。後から台本を読んでドンデン返しで犯人だった場合、それはそれで意外な演技をする楽しみもあるでしょうけれど、犯人であれば犯罪に至るまでの感情やそれを伏せるときの葛藤などを演じてほしいと僕は思っています」
だからこそ福田さんは、いくらニーズがあっても過多な伏線やフラグを入れない主義と言う。周囲からもっと視聴者がわかりやすい伏線を入れてくれと依頼された場合、「説明し過ぎと思ったら却下します」と線引きしている。
「僕が理想とするドラマは、視聴者がこうあってほしいと思う期待は裏切らないけれど、そこに行き着くまでの予想は裏切ることです。例えば『オールドルーキー』で言えば、第1話でドイツリーガー(横浜流星)が主人公・新町の勤務するスポーツマネージメント会社・ビクトリーと契約してほしいなあと視聴者が期待することを、その過程においていかに裏切っていくか。こういう一種のサスペンスやミステリーの手法はいかなるジャンルにも必要だと思っています」
売れっ子脚本家が「オリジナル作品」にこだわる理由
時代の変化に悲観はない。「うちの子供は、父親が脚本家という目で周囲から見られるようになると、評判のいいものを書けば嬉しく、そうでなければ寂しいと感じるようです」と子供や周囲の視線も意識しながら、それでも自身の信念は守ったうえでオリジナリティーのあるドラマを作りたいと考える福田さん。これまで月9、大河ドラマ、朝ドラと多くの人が視聴する枠のドラマを手掛け高視聴率という結果を出してきた。時には原作ものの脚本も書くが『HERO』『龍馬伝』『まんぷく』などオリジナル作品は高い人気を誇った。
『オールドルーキー』は初めての日曜劇場。いま最も注目されている枠で書くことについてはどう考えているだろうか。