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“5年勝てなかった”内藤哲也に大逆転勝利…棚橋弘至45歳が『G1』2戦目で涙ぐんだワケ「それくらい差があったんだと思います」
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2022/07/27 11:03
7月24日に大田区総合体育館で行われた『G1 CLIMAX 32』Cブロック公式戦。内藤哲也を下した棚橋弘至は、涙をこらえるように天を仰いだ
棚橋は倒した内藤にとどめとばかりにハイフライフローという名のフライング・ボディプレスを高く飛んで放ったが、これをかわされたときは「棚橋の夏は終わった」と思った。
だが、攻勢に出てデスティーノを狙う内藤を、棚橋はうまく丸め込んだ。生き残るためのフォールだった。
「内藤の時代」に棚橋が抱いていた葛藤
「G1で内藤に初めて勝ったらしい。そして、G1の公式戦を1勝1敗にした意味も大きい。今日は心の底からほっとしている。ただ、プロレスラーがほっとしていいのは、試合が終わって、寝て、次の朝起きるまで。この時間だけ。また明日の朝切り替えて、2時間歩いて、ジムに行って、しっかりしたもの食って。今、オレにある時間を全部プロレスに費やしちゃっても足りないくらいファンのみなさんには感謝しているし、力をもらっている」
棚橋は涙をこらえようとしたのか、何度も天を仰いだ。内藤の絶大な人気と、新日本プロレスが内藤を頂点にして歩んだ時代を、棚橋が否定することはなかった。しかし葛藤があったのは間違いないだろう。かつて「内藤に勝っていた棚橋」がいて、近年は「内藤に勝てない棚橋」がいた。
「それくらい差があったんだと思います。試合はいっぱいあるけれども、オレが一番覚えているのは2011年10月の両国でのタイトル戦。オレが内藤の手を挙げて、『これからオレらで盛り上げて行くぞ』って言ったのが恥ずかしいくらい(その後の)内藤の活躍があって……。ただ、今日1つ勝ったことで、何かが済んで、何かが始まった気がします」
棚橋は自身が勝利した2011年10月10日の両国国技館でのIWGP戦を思い出していた。「よくここまで来たな」と内藤にかけた当時の言葉を思い出して、11年という時の流れを感じた。いつの間にか2人の立場は逆転してしまった。