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東京五輪後の突然の悲報。“ルイスのライバル”、バレルの息子の死を受けて…親友が明かす世界陸上への思い「僕たちは一緒に行くんだ」
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph byGetty Images
posted2022/07/23 06:12
世界陸上でスプリント王国アメリカのリレーメンバーの一員となったイライジャ・ホール
いつも一緒だったヒューストン大学の競技場に足を踏み入れるのが怖くなり、ホールは練習拠点とコーチを変えた。
世界陸上ではリレーで米国に貢献したい
新しい環境、そしてコーチの下で練習し、6月の全米選手権で9秒90の自己ベストを記録。
「3位以内に入りたかったけど、米国は強豪ぞろいだからね。リレーでしっかり走って米国に貢献したい」
悔しさとともに、環境が変わった中で結果を出せたことに充実感もあった。
初の世界陸上代表に喜びを爆発させた後、ホールはぽつりとこう答えた。
「今でも毎日キャメロンのことを考える。彼を失った苦しみ、悲しみが癒えることは決してないと思う。でも自分が陸上をやめたらキャメロンはきっと悲しむ。自分が走り続けることで、キャメロンも一緒に生き続けることができるんだ。だから走り続けないといけない」
コロナ禍に人と人の関係が希薄になったせいなのか、米国でも自殺が増えている。大学スポーツでも自ら命を絶つ選手がおり、社会的な問題になっている。
「自殺を考えている人がいたら、『いつか光が差す』と信じて戦ってほしい。仲間や家族がいることを思い出して踏みとどまってほしい。いかないでほしい」
そう訴える。
ホールは大会8日目、7月22日(日本時間23日)の男子400mリレー予選に出場が予定されている。亡くなった親友への思い、そして自分自身の道を新たに切り拓くためにレースに臨む。
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