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プロ野球PRESSBACK NUMBER
「もう、ええか」野村克也監督から“戦力外通告”を受けた男…その9年後、ノムさんから突然かかってきた電話「どうだ、高校野球は?」
posted2022/07/22 17:01
text by
加藤弘士Hiroshi Kato
photograph by
Sankei Shimbun
当時の番記者が関係者の証言を集め、プロ野球復帰までに迫ったノンフィクション『砂まみれの名将 野村克也の1140日』(新潮社)が5刷とベストセラーになっている。
そしてシダックス時代の“教え子たち”はいまアマチュア球界の各所で、若き野球人にノムさんの教えを伝えている。『砂まみれの名将』の著者・加藤弘士氏が、中央学院高・相馬幸樹監督を取材した(全2回の1回目/後編へ)。
◆◆◆
あるメロディーを聴いた時、その音と一緒に過ごしていた季節の記憶を呼び起こされることが、たまにある。
あの日もそうだった。
2018年3月25日、甲子園球場で行われたセンバツ高校野球大会。
千葉の初出場校・中央学院と四国の雄・明徳義塾とのマッチアップ。NHKの甲子園中継から流れる、中央学院の吹奏楽部が奏でる音楽に私は耳を奪われ、心を躍らせた。
「シダックスファイヤー」だ。懐かしいな――。
その勇猛な旋律は瞬間的に15年前の東京ドームへといざなってくれた。
03年の都市対抗野球大会、野村シダックス1年目の情景だ。エース・野間口の力投やキンデラン、パチェコの豪快な打棒。野村はメガホンを片手にベンチから大声で指示を送っていた。
決勝では三菱ふそう川崎に逆転負けを喫したが、快進撃をスタンドから後押ししたのが、チームのオリジナル応援曲「シダックスファイヤー」だった。
ツイッターをチェックする。甲子園期間中は好事家たちが出場校のブラバン応援について感想や批評をぶつけ合うのだが、高校野球の聖地で初めて奏でられるこの曲には「魔曲すぎる」「めちゃくちゃかっこいい」といった声が散見された。
中央学院野球部監督の相馬幸樹がシダックスの一員であったことを誇りとし、強いこだわりを持ってその後の野球人生を歩んでいることがうかがえた。
野村からの教えを現在の高校球児にどう伝えているのだろうか。
相馬に会いに行った。
「東大を卒業したぐらいの価値がある」
千葉県北西部、我孫子市の住宅エリアに中央学院のキャンパスはある。
グラウンドに入ると、ベンチに置かれたホワイトボードには「無形の力」と記されていた。
野村が愛した言葉だ。
「無形の力」とは、何ですか?
私は記者になりたての頃、野村へ聞いたことがある。