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“5弱のセ・リーグ”で特に苦しい…中日に“2人の救世主候補”「外れの外れの外れのドラ1」「日系初のMLB監督を父に持つ…」
posted2022/07/20 11:01
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph by
Nanae Suzuki
ヤクルトがセ・リーグの貯金を独占し快走している。大量の新型コロナ感染者を出し、6連敗と急ブレーキがかかりながらも首位の座は揺るがない。一方でDeNA、阪神、広島、巨人が残り2席のCS出場権を巡って、ひしめき合っている。残った中日はといえば、4弱の輪にすら入れず最下位に沈んだままである(7月19日終了時点)。
泣きっ面に蜂、弱り目に祟り目とはよく言ったもので、さらなる苦難が待ち受けていた。右脇腹を痛めた高橋周平と、左手首に慢性の痛みを抱えているアリエル・マルティネスが、そろって7月17日に戦列を離れた。緊急、いや非常事態に立浪和義監督は即断。オリックスからトレードで獲得したばかりの後藤駿太(29歳)と、育成選手だったルーク・ワカマツ(25歳)を支配下登録するとともに、2人とも一軍に昇格させ、同日の阪神戦(甲子園)で先発起用したのだ。
救世主候補1)“史上唯一”のドラフト1位
群馬県出身の後藤は、前橋商在学中に甲子園で活躍。右投げ左打ちの有望な外野手の多くがそうだったように「上州のイチロー」と呼ばれた。実際にその強肩と俊足はNPBを見渡してもトップレベル。2010年のドラフトでオリックスから1位指名されている。ただし、本人の意思や実力とは全く関係のないところで、後藤の名は「史上唯一」としてドラフト史に刻まれている。
それは「外れの外れの外れのドラ1」。この年のオリックスはまず大石達也(早大)を指名。しかし阪神、西武、広島、横浜、楽天と6球団が競合し、西武が交渉権を獲得した。これが「外れ」。続いて伊志嶺翔大(東海大)を指名するが、今度は斎藤佑樹を外したロッテとの2分の1を逃す。これで「外れの外れ」。さらに「今度は大丈夫」と指名したはずの山田哲人(履正社高)まで、斎藤、塩見貴洋(八戸大)を外したヤクルトとまさかのバッティング。ここでも2分の1を外してしまった。
ようやく4人目で確定したのが後藤だったというわけだ。とはいえ、ドラフト全体を見渡せば12番目の指名選手であり、その中に入った高卒の選手は山田、山下斐紹(ソフトバンク、現中日)と後藤の3人しかいない。
外れの外れの外れの18歳は、プロですぐに頭角を現した。何と1年目の開幕戦で先発起用されたのだ。外野守備とスピードは抜きんでていた。ただし、1年目が40打数4安打に終わったように、打撃での確率の低さがずっと課題としてつきまとった。