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「ピカチュウ」が話題だが…「ジーコ=やせっぽち」は間違い? ロナウジーニョとロナウドの違いって?〈ブラジル人選手ニックネームのナゾ〉
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byJMPA
posted2022/07/23 17:02
日本でも愛されたロナウジーニョとロナウド。2人の愛称って何が違う?
1988年から2009年までフラメンゴ、コリンチャンスなどで活躍し、2002年にガンバ大阪でプレーしたMFマルセリーニョ・カリオカ(「マルセリーニョ」は「小さなマルセロ」の意味)はリオ州出身で、マルセリーニョ・パウリスタというサンパウロ州出身の選手もいた。
また、元ブラジル代表MFで現在はブラジルサッカー連盟の強化部長を務めるジュニーニョ・パウリスタ(「ジュニーニョ」は「小さなジュニオール」の意味)はサンパウロ州出身で、2000年代にリヨンで活躍したFKの名手ジュニーニョ・ペルナンブカーノはブラジル北東部ペルナンブコ州出身だ。
現在のブラジル代表には、リヨンで活躍するMFルーカス・パケタという選手がいる。彼のファーストネームもルーカスというよくある名前で、リオ市東部にあるパケタ島の出身であることからこう呼ばれている(ルーカスを省いて単にパケタと呼ばれることも多い)。ブラジル北東部のセアラ州出身であることで、セアラと呼ばれたDFもいた。
「ロナウド」をめぐる呼び方は一種の言葉遊び?
これは日本人にもかなり知られていると思うが、ブラジルでは一般に小さかったり、かわいらしかったり、親しみを抱いている場合、名詞や形容詞の語尾に「〇〇イーニョ」と付けることが多い。その反対に、大きな場合は語尾に「〇〇ドン」と付ける。
これらはニュアンスを付加する一種の言葉遊びで、ブラジル人が好んで多用する。
たとえば、ロナウドもありふれた名前なので、小柄なロナウドをロナウジーニョ、大柄なロナウドなのでロナウドン(ブラジル代表にも選ばれたCBで1994年から96年まで清水エスパルスで活躍)と呼ぶ。
なお、1998年から2015年までパリ・サンジェルマン、バルセロナ、ACミラン、ブラジル代表などで活躍した名MFロナウジーニョは、ブラジル国内ではたいていロナウジーニョ・ガウーショと呼ばれる。
ガウーショとはカウボーイ、またはブラジル南部リオ・グランデ・ド・スル州出身者のことで、ロナウジーニョの場合は後者の意味で使われる。
また、インテル、レアル・マドリーなどで活躍したロナウドはブラジル国内ではロナウド・フェノメノ(驚異のロナウド)と呼ばれる。これは、現役時代の彼の驚くべきプレーが由来だ。
ブラジル人らしい鷹揚さが現れている
このように、多くのブラジル人選手が様々な理由からニックネームを持っており、それを自動的にフットボールネームとして使っている。そして、それらが少々奇妙であったり、場合によってはネガティブな意味を持つことがあっても、他者から親しみや愛情が感じられる場合は全く嫌がらない。
こういう鷹揚で些事にこだわらないところが、いかにもブラジル人らしい。このような国民性がプレースタイルにも大きな影響を与えており、ひいてはブラジルのフットボールが世界中で広く愛される理由の一つではないかと考えている。<#1/「ピカチュウ秘話」につづく>