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甲子園で対戦した智辯和歌山バッターたちの“田中将大評”「すとんて消えて」…高嶋仁監督が北海道で聞いた「待つ」の意味
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byBUNGEISHUNJU
posted2022/08/17 17:00
2006年夏、打倒・田中将大に燃えた智辯和歌山の戦いを振り返る
「田中が卒業するのを待つっちゅうねん。何してもあかん、と。バントやら何やら、いろいろ試して、そういう結論にいたったんやと思う。でも、今思うと、それも作戦やな。無駄なことはせんという」
だが、高嶋の中には、そもそもそのような発想はなかった。
田中同様、「消える」と言われるスライダーで、'12年夏、甲子園を席巻した投手に桐光学園の松井裕樹(楽天)がいる。横浜は翌年夏、神奈川大会で、松井のスライダーを捨て、真っすぐだけを待つことで攻略した。高嶋は自省を込めて言う。
「横浜は、賢い。でも俺はちゃう。いちばんいいボールを打ちたい。そら、マシンと人は違いますよ。でも、せんより、いいでしょう。ただ、やることやったけど、どうしようもなかった。北海道の人が待つって言ったのは、その答えやったと思う」
「世代最強」田中将大を味わって…
古宮はそんな恩師を、こう評する。
「純粋なんです。目の前の壁に素直にぶつかっていく。ただ、隙だらけですけど」
この年、田中の「世代最強」たるゆえんをもっとも味わったのが智辯和歌山だった。
廣井は、今の田中について、ほんの少しだけさみしそうにこう語った。
「ヤンキースに入ってからは、スプリットばっかりですよね。あのスライダー、どこにいったんですかね」