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「オオタニ28歳=35本塁打が狙える大エース」 働きすぎと“お先真っ暗エ軍のトレード話”は心配だが…〈大谷翔平の成績を昨年と比較〉
posted2022/07/17 17:04
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Nanae Suzuki
大谷翔平の投手、指名打者でのオールスター出場が決まった。ご同慶の至りではあるが、筆者はいろいろ懸念もしている。大谷翔平は間違いなく「MLBで一番働いている」選手だからだ。
依然として“最も危険な打者”を示す数値とは
昨年と今季(現地7月16日、チーム91試合時点。21年はオールスター前)での大谷の投打の成績を比較してみよう。
<打撃成績>
2021年 84試 301打 84安 33本 70点 12盗 38球 98振 率.279 OPS1.062
2022年 89試 333打 86安 19本 56点 10盗 44球 91振 率.258 OPS.834
昨年のこの時期は、本塁打1位、打点は2位。ベーブ・ルースのシーズン60本塁打に迫るのではないかと言われ、間違いなくアメリカン・リーグの最強打者だった。OPS10割超えは、MVP級の活躍だと言える。
しかし今季は、本塁打は10位タイ(1位はヤンキース、ジャッジ31本)、打点は8位タイ(1位はガーディアンス、ラミレス70点)、OPSは15位。リーグ屈指の強打者ではあるのだが、昨年ほどの迫力がないのは間違いない。
今季はマイク・トラウトが復帰。昨年は勝負を避けて歩かされることが多かったため、今季は打てる機会が増えると期待された。しかし四球数はそれほど変わらず。1番を打った時期もあり打席数は増えているが、その割に成績は上がっていないという印象だ。
ただ、MLB公式サイトによれば打球速度や飛距離などのデータは相変わらずリーグ上位数パーセントだ。
フライボール革命とは、「バレル」と呼ばれる一定の角度(26~30度)で158km/h以上の打球速度でボールを打ちホームランを量産するというシンプルな考え方だが、大谷はバレルで打った打球の数は昨年78本で1位、今年も43本で3位。依然として最も危険な打者の一人なのは間違いない。
ただ、今季は昨年よりもゴロアウトが増えている。投手がより警戒をして低めに変化球を投げるなど、攻略法を工夫しているためにやや成績が落ちているとは言えそうだ。
投手としては明らかに制球力が良くなっている
投手としてはどうだろうか? こちらもオールスター前までの成績である。
<投手成績>
2021年 13試 4勝 1敗 6QS 67回 46安 6本 35球 87振 責26 率3.49
2022年 15試 9勝 4敗 9QS 87回 64安 8本 22球 123振 責23 率2.38
総合的にぐっと良くなっている。先発投手の「安定」の指標であるQS(クオリティ・スタート、先発で6回以上投げて自責点3以下)が6試合から9試合に増えている。そして与四球はイニング数が20増えているのに13も減っている。制球力が飛躍的に向上しているのだ。