酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
「オオタニ28歳=35本塁打が狙える大エース」 働きすぎと“お先真っ暗エ軍のトレード話”は心配だが…〈大谷翔平の成績を昨年と比較〉
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byNanae Suzuki
posted2022/07/17 17:04
2ケタ勝利目前など、投手としての活躍が目立った前半戦の大谷翔平。オールスターを経て、どんな数字を残すか
リーグこそ違え、大谷も同じカリフォルニア州アナハイムを本拠とするエンゼルスの選手である。ご当地選手として、投打にいいところを見せたいと思うのは当然で、今季も大歓声を浴びることは確実だし、彼もいきいきと野球を楽しむことだろう。
前日のホームランダービーについては回避を決めたという。これは賢明な判断ではないか。
以前からホームランダービーに出場した打者は、後半戦の成績が落ちると言われてきた。いかにコーチが投げる緩いボールであれ、何十スイングも全力でバットを振り回すことで、精緻な感覚が狂ってしまうリスクがあるからだ。
「引っ張りすぎ」と成績が落ちた2021年後半戦
大谷がホームランダービーに出場した昨年の、オールスター前と後の成績を比較する。
球宴前 84試301打84安33本70点12盗38球98振 率.279 OPS1.062
球宴後 71試236打54安13本30点14盗58球91振 率.229 OPS.840
後半戦、投手がさらに警戒し四球が大幅に増えたこともあるが、大谷は四球と盗塁以外のすべての数値が下がってしまった。
昨年後半の大谷の打撃で気になったのは「引っ張りすぎた」ことだ。
昨年前半と後半の本塁打の飛んだ方向を見てみよう。
球宴前 33本(左4本・左中間3本・中5本・右中間9本・右12本)
球宴後 13本(中1本・右中間2本・右10本)
アメリカのマイナーリーグでAAAまで昇格し、スラッガーとして活躍した野球指導者の根鈴雄次さんは、大谷がMLBで認められたのは「反対方向にホームランを打つことができたから」と言う。
今季のホームラン方向はいい傾向にある?
左打者・大谷の「反対方向」とは左、左中間である。この方向に大飛球を打つときは、無理に引っ張ることなく、良いバランスでボールをバットに乗せて遠くに運んでいると言える。もちろん強打者は「引っ張る打球」がメインになるのだが、どれだけ反対方向にも打っているかが、調子のバロメーターになる。
昨年の大谷は、中堅から左のスタンドに、33本塁打のうち36%にあたる12本を放り込んでいた。しかしオールスター後は、中堅に1本スタンドインさせただけ。後の12本は引っ張ってのホームランだった。ホームランダービーでの「引っ張るスイング」が、感覚を狂わせた可能性はないとは言えないだろう。
今シーズン、大谷の本塁打の方向は以下の通り。