ボクシングPRESSBACK NUMBER
井上尚弥本人が「背筋も喜んでるわ」と投稿…SNSで話題となった“驚異の背筋”を激写したカメラマンの証言「“筋肉の表情”を撮りたかった」
text by
NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph byTakuya Sugiyama
posted2022/07/12 11:01
ノニト・ドネア戦後に話題となった井上尚弥の“背筋”を収めた一枚。カメラマンが撮影の舞台裏を明かした
杉山は「肉眼では表情が見えない」というほどの距離から、写真の画質を保ちつつリングの上の被写体を捉えるため、普段の撮影とは異なる意識と方法で臨んでいた。使用したのは1秒間に多くのシャッターを切れるカメラではなく、回数は捨てて画素数にこだわったカメラだった。
「構図として一番撮りたいと思っていたのは、開始のゴングが鳴った瞬間の井上選手の様子、そしてそれを真正面からドネアの背中越しに捉えるというもの。それを狙って撮れたので、個人的にはちょっと満足している一枚です」
ひとたび始まりのゴングが鳴れば、2人のボクサーが織りなすバトルを追う戦いが始まる。
「1Rで井上選手はダウンを奪ったのですが、恥ずかしい話、あまり上手く撮れていなかった(笑)。それで『やばい、これは本当に早く勝負が決まるかもしれない』と、ようやくエンジンがかかりましたね」
まるで鎧…「『なんですかこれ』っていう肉体をしている」
ダウンを奪った1ラウンドを終え、会場にKOの期待が充満する。杉山にとっても背水の陣となった第2ラウンド。井上が背を伸ばしながら席から立ち上がる――。その様子を捉えた一枚は鋼の鎧を身に着けたように綺麗に割れた腹筋と脇腹の筋肉が見えている。
「これはもともと表現しようと思っていた前側の筋肉が分かる一枚です。ただ、ここまでとは……。改めて写真を見て驚きました。自分で撮った写真ですが、『なんですかこれ』っていう肉体をしていますね」
そして最初に触れたKO&背筋ショットの場面へと試合は展開していく。
「背に腹は代えられない」というが、井上尚弥の場合は背も腹も両方とも凄い。杉山が撮影した写真は、そのことを端的に示している。
井上は昨年11月からスーパーバンタム級への昇級を視野に、元世界王者の八重樫東トレーナー直伝のトレーニング(通称「八重トレ」)をスタートさせていた。今回のドネア戦でも「その効果が出たんじゃないか」と手応えを口にしている。
全身のどこを切り取っても絵になる男は次にガウンを脱いだ時、ファインダー越しに一体どんな筋肉の表情を見せてくれるのだろうか。
(撮影=杉山拓也)
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。