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井上尚弥の“最大の難敵”スティーブン・フルトン27歳「俺の身体は大きくなっているから、急いでほしいな」極悪な街で育ったタフな男の井上評
posted2022/06/24 11:05
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph by
L)Getty Images R)Takuya Sugiyama
#1で取り上げたWBO世界バンタム級王者ポール・バトラー(イギリス)が井上尚弥(大橋)の“バンタム級での最後の標的”なら、1階級上で最強の評価を享受するスティーブン・フルトン(アメリカ)は井上にとって“最大の難敵”になる可能性がある強豪だ。
WBC、WBO世界スーパーバンタム級王者のフルトンはこれまで21戦全勝(8KO)。パンチ力以外のほぼすべてを備えたオールラウンダーで、6月4日、ミネアポリスで行われた防衛戦では過去最高の相手と目された元WBA、IBF王者ダニエル・ローマン(アメリカ)にも大差判定で完勝を飾ってみせた。
フルトンの現在の目標は、スーパーバンタム級ではまだ誰も成し遂げていない4団体統一。ローマンからWBA、IBF王座を奪ったムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)との4冠戦が実現すれば、軽量級の注目ファイトになる。その試合に勝ち、同じタイミングでバンタム級での戦いを一段落させた井上が昇級してきたとすれば、当然のように直接対決が話題になることだろう。
古都フィラデルフィアの危険な地域で育ち、心身両面のタフさは筋金入り。身長169cm、リーチ179cmというフェザー級でも十分に通用するサイズを持ち、技術、身体能力、マラソンランナー顔負けのスタミナまで備えたフルトンは、近い将来、井上のライバルに浮上するのか。
井上対ドネアの再戦が目前に迫った5月中旬、フルトンにじっくりと話を聞いた。その言葉の一部は発売中の本誌に掲載されているが、ここでは完全版をお届けしたい。
“クールボーイ(格好いい男)・ステフ”という愛称を自らも好む27歳。以前は「井上は小さすぎる」と一蹴していたが、今回の取材時にはより詳細な分析を巡らせてくれた。その言葉から、フルトンが1階級下で破竹の勢いを見せるモンスターをより現実的な対戦相手候補として認識し始めていることが明白に感じられた。
「俺の試合は瞬きをしている間にすべてが変わる」
――あなたは多才な能力に定評がありますが、自身のボクシングスタイルをどう表現しますか?
「俺の試合では、瞬きをしている間にすべてが変わる。リング中央でアウトボクシングすることだってできるし、打ち合いで相手を叩きのめすことだってできる。すべては俺の気分と試合の流れ次第だ。様々なスタイルで戦えるというのはいいものだ」
――仰る通り、あなたはスキル、スピードだけでなくフィジカルも強く、6マイルを36分で走りきるほど長距離走が得意なためにスタミナも飛び抜けていると評判です。自身の様々な長所の中で、最も誇りに思う部分は?
「精神的な強さだ。常に状況を把握し、メンタル面での強さを保てる。だからこそ、相手によって異なるファイトスタイルを選択できるんだ」