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「予想は当たってた」「3着変なん来い!変なん来いっ!」園田競馬の“異色すぎるガイド漫画”誕生の経緯とは? 元厩務員の作者に直撃
text by
曹宇鉉Uhyon Cho
photograph byKYODO/Masakazu Tamura/Sonoda Himeji Keiba
posted2022/07/10 06:00
ナイターも開催され、近年好調な売上を記録している園田競馬。同HPで公開されている『園田競馬ビギナーズガイド』の作者・田村正一さんに話を聞いた
馬に蹴られて脾臓を損傷…厩務員のハードな日常
『うまのしごと』では、地方競馬の厩務員の知られざる日常を描いている田村さん。そもそも、なぜ厩務員の仕事に就くことになったのか。その入り口は、意外にも一般的な求人広告だった。
「もともと競馬は好きでしたが、僕の場合はまったくの未経験からのスタートでした。それまで乗馬はもちろん、馬に触ったことすらなかったんです。特殊な技能が必要な仕事だと思っていたので、求人を見て『未経験でもなれるんだ!』と驚きました」
北海道の牧場で2カ月間の研修を受けたのち、厩務員としての第一歩を踏み出した田村さんだったが、仕事は決して楽ではなかった。
「日々のルーティンとしては、午前1時くらいから調教が始まって、8時ごろまで続きます。レースがない日は、そこから昼まで中休み。みんなそこで仮眠をとっています。その後は昼と夕方に馬の様子を見たり、飼葉をつけたり……。休みはだいたい週1日ですが、カレンダーによってはもっと少ないこともありました。特に冬場の深夜から早朝にかけては大変でしたね。単純にめちゃくちゃ寒いんで(笑)。でも、自分の仕事さえしっかりやっておけば融通がきく部分も少なからずあって、そこは向いていたかもしれません。
とはいえハードなのは間違いないので、新しく入ってきた人も結構すぐに辞めてしまいがちです。続いている人は、とにかく馬が大好きな人ばかりでした。そういえば、犬を飼っている人がやたら多かった。やっぱり動物好きというのが根底にあるんだと思います。厩舎まわりには猫もたくさんいたんですが、みんなでアホみたいにかわいがってましたね(笑)」
世話をする相手は人間よりもはるかに大きく、パワーも桁違いのサラブレッドだ。田村さんも厩務員時代、骨折に加えて、馬に蹴られて脾臓を損傷したことがあった。
「蹴られたのは自分の担当馬ではない同じ厩舎の馬です。元々うるさいところのある馬で、能力検査(未出走馬に対して行われる試験)のときに手伝いに入って2人で引っ張っているときに、いきなりお腹を蹴られてしまいまして……。その瞬間はもう全然立てなくて、うずくまりながら『こらアカン』と。なんとか家に帰って安静にしていたんですけど、『やっぱり大丈夫じゃないな』ということで病院に行ったら、お医者さんが『これ、ヤバいわ』と(笑)。そこから救急車で尼崎の大きな病院に運ばれて、1週間寝たきりで過ごしました」