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「予想は当たってた」「3着変なん来い!変なん来いっ!」園田競馬の“異色すぎるガイド漫画”誕生の経緯とは? 元厩務員の作者に直撃
posted2022/07/10 06:00
text by
曹宇鉉Uhyon Cho
photograph by
KYODO/Masakazu Tamura/Sonoda Himeji Keiba
いま、競馬ファンを中心に、ひそかな人気を集めている漫画がある。園田・姫路競馬のホームページで公開されている『園田競馬ビギナーズガイド』だ。
「トシ君…朝一でジャ◯ラーの6引いたから今日は行けなくなったって…」
「トシ君クズやな!!」
無職で歯のない彼氏・トシ君に競馬場デートの予定をすっぽかされた山田火酒(火酒と書いてウオッカと読む)と、園田競馬歴40年のおじさんが繰り広げる、あけすけで哀愁を誘う会話劇……。競馬ファンなら一度は耳にしたことがある「予想は当たってた」「最初からわかってた」などのクリシェを“競馬用語”として解説するパンチの効いたユーモアも、オフィシャルなPR漫画の類型とは一線を画している。
厩務員と漫画家の兼業時代も「最初は怒られるかと」
同作を手がけた漫画家の田村正一(たむら・まさかず)さんは、2007年から2018年まで園田競馬場で働いていた元厩務員でもある。いったい、どういった経緯で異色のビギナーズガイドが世に出ることになったのだろうか。
「園田・姫路競馬のホームページで厩務員のエッセイ漫画『うまのしごと』を描いていた関係で、2019年に『園田競馬ビギナーズガイド』の依頼をいただきました。とりあえず好きに描いてください、と言われたので本当に好きに描いた結果、ああなったという感じです(笑)。もちろんネームの段階でチェックは入りましたけど、ほぼそのまま通ってしまって……。関係者はドキドキしていたみたいですが、おかげさまでわりと好評だったので、2020年、2022年と続編を描かせてもらっています」
田村さんは20代のころに厩務員の仕事と並行して漫画を描き始め、『週刊ヤングジャンプ』(集英社)の読み切りでデビューを果たした。さらに2015年から2016年にかけて、『ヤングアニマル』(白泉社)の電子版で現役厩務員としての経験をベースとした『サラブレッドと暮らしています。』を連載(のちに単行本化)。連載当時、漫画を描いていることは周囲に伏せていたという。
「ある日、園田競馬場の広報から出版社に問い合わせがあって、担当編集経由で僕に連絡が来たんです。最初は怒られるのかと思いましたよ(笑)。でも結果的に、それがきっかけで『うまのしごと』を描かせてもらうことになりました。関係者の方の懐の深さに感謝ですね」