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セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
悪童ロマーリオが副議長、ミランの得点源は大統領、なぜ“日韓W杯トルコの英雄”は国会議員→米国に亡命?〈元サッカー選手政治家の明暗〉
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph bySports Graphic Number(L,R)/Getty Images
posted2022/07/09 17:02
ロマーリオ、ウェア、ハカン・シュクル。各国を代表するストライカーは政治家転身してどうなった?
サッカーの世界でどれほど激しく戦い、華々しい戦果を挙げたとしても、政治家への転向には相当の覚悟が求められる。
トルコの英雄が“国会議員だったのに亡命”したワケ
トルコ史上最高のストライカーとされ、日韓W杯で3位に輝いた同国の英雄ハカン・シュキュル(50歳)は今、亡命先の米国カリフォルニアで無聊を慰める日々だ。
シュキュルはトリノやインテル、パルマでプレーしたセリエA時代こそ順応に苦しんだが、母国のガラタサライでは通算189ゴールを挙げた。欧州でも名の知れた点取り屋だったことは間違いない。
08年の現役引退後、11年の国政選挙にレジェップ・タイップ・エルドアン(68歳)率いる公正発展党から当選し、晴れてトルコ国会議員になったまでは良かった。
だが、14年に大統領となったエルドアンは「ギュレン運動」と呼ばれる民主主義活動を弾圧し、これに賛同していたシュキュル議員は身の危険を察知し、15年12月に米国へ逃亡した。昨年、元議員は自身の窮状を伊誌に語っている。
「トルコ国内では私に逮捕状が出ています。母国を愛していますが、帰ることはできません。個人資産はすべて没収され、親戚一同犯罪者扱いです。エルドアン(大統領)の弾圧によって、国内では私の名前を出すこともご法度だそうです。ここでの生活は苦しいです。食べていくためにパン屋の主人をやり、Uberの運転手もしています。もし、チャンスをもらえるなら、サッカーの世界でやり直したい。いつの日か、トルコの地でも正義と民主主義がなされると信じています」
南米ではペレ、ロマーリオ…なぜ政治家を目指す?
南米に目を向ければ、元サッカー選手の政治家は多士済々。
ブラジルはスポーツ大臣ペレに始まり、10年に連邦議会選に初当選したFWロマーリオ(56歳)は現在同上院副議長を務めている。
メキシコでは元代表FWクアウテモク・ブランコ(49歳)がモレロス州知事になり、インテルなどで活躍した元アルゼンチン代表FWフリオ・クルスもブエノスアイレス郊外の自治体首長選挙に挑んだ。
本稿に名を挙げた元プレーヤーたちは、外交問題や民主化運動、汚職追及から貧困問題まで眼前の危機に挑んでいる。腰掛け気分で政界に身を投じた者はいない。
なぜ、彼らはサッカー界から政治の道を志したのか。