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「史上最強の女流棋士は誰か?」里見香奈(30歳)vs西山朋佳(27歳)“負けない”二強時代、ライバル関係について2人に質問してみると…
text by
相崎修司Shuji Sagasaki
photograph bySankei Shimbun
posted2022/07/02 11:02
里見香奈女流四冠(30歳、左)、西山朋佳女流二冠(27歳)。この4~6月だけで両者は10局も指している
そして両者は奨励会に在籍経験があり、ともに三段リーグまで昇った。こちらは三段リーグで勝ち越しがなかった里見に対し、西山は次点獲得の経験があるので、やや西山に軍配が上がる。
公式戦における対男性棋士との戦績を見ると、里見は10勝4敗(その後2連勝し、12勝4敗)の成績を上げて棋士編入試験の受験資格を得た。そして先日、受験を表明し大きく話題になった。倒した相手もB級1組に昇級を決めた澤田真吾七段、王位戦で挑戦者決定戦まで勝ち進んだ池永天志五段、叡王戦五番勝負に出場した出口若武六段らの強敵ぞろいで、文句なしである。また編入試験の資格を得た一局は棋王戦の対古森悠太五段戦だが、この勝利で里見は女流棋士として史上初めて8大タイトル戦の本戦入りを果たした。
対して西山の公式戦における実績は、なんといっても2020年の第33期における竜王戦6組ランキング戦ベスト4進出だろう。あと1勝していたら史上初の「プロ棋士以外の参加者による5組昇級」が実現していた。そして翌34期でもベスト8まで勝ち残った。なお竜王戦の里見は初戦突破が2回あるだけだ。
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棋士編入試験のことを考えると、現状は里見が一歩先を行っていると言える。西山の現在の対男性棋士成績はいい所取りで4勝3敗。そして次の対局が確定しているのは朝日オープンと新人王戦の2棋戦。これに例年だと8月に予選が始まる王位戦が加わる(女流王位の前期挑戦者なので参加資格がある)。3棋戦で6勝2敗というのは簡単な道ではないが、里見に続いて棋士編入試験の受験資格を得る事も不可能とは言えない。
ライバル関係について2人に質問してみると…
「女流頂上決戦」「令和のゴールデンカード」など、とにかく注目を集める両者のライバル関係だが、このような見方をされることを本人はどう考えているのだろうか。両者に聞いてみると、
里見は「自分自身課題が多いので、棋力向上の為精進しなければと思っております」
西山は「まだまだ技術が足りないので力をつけないといけないと身が引き締まる思いです」
と、ここでは2人とも全く同じことを言っている。相手がどうとか、どのように見られるかというのは全く意識の外なのだ。とにかく少しでも強くなる、その一点のみである。
両者がこれからも女流棋界で数多く戦うことは間違いない。あるいは半年~1年後くらいには、西山の棋士編入試験の試験官を里見が務めるという状況が起こり得るかもしれない。将棋界のライバル関係を示す指標の一つに「百番指し」があるが、女流棋界で達成したのは清水女流七段―中井女流六段のカードのみ。2例目の百番指しの実現にも期待したいと思う。何より多くの将棋ファンが両者の熱戦を待ち望んでいるのだから。