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心が震えた“村上宗隆との真っ向勝負”も…ソフトバンク和田毅はなぜ、41歳で自己最速を更新できた? 本人が語る“奇跡の裏側”
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byJIJI PRESS
posted2022/07/06 06:00
6月19日、日米通算150勝と球団新記録の通算1757奪三振を達成したソフトバンク和田毅
また、この楽天戦では2つの偉業を成し遂げた。二回表に島内宏明から見逃し三振を取り、これが通算1757奪三振で球団歴代1位に立った。前身の南海時代の伝説的エース・杉浦忠氏の記録を更新。「ホークス入団時に『杉浦さんのような投手になれるように』という思いも込めて、背番号21を選ばせてもらった経緯があります。奪三振で抜くことが出来てうれしいです」と喜んだ。
「アメリカの経験がなければ、今投げられていないかも」
そして、日米通算150勝の節目の白星を挙げた。
この勝ち星のうちメジャーでは4年間で5勝を挙げたのみ。渡米1年目に左肘を故障してトミー・ジョン手術を受けた。マイナー暮らしの時間も長かった。
或いは、ホークス一筋の選手人生だったならば、名球会入りにかなり近づいていたかもしれないし達成できていたかもしれない。だが、和田は含み笑いを浮かべて首を横に振った。
「逆にアメリカの経験がなければ、今投げられていないかも。確かにもしかしたら、今より勝てている可能性もゼロではないと思います。だけど、野球人というか人間的にも成長できた。昔の自分より今の自分の方が、いろんな意味を含めて好きかなと思う。なくてはならない4年間だったと思います。だから、今でもまったく悔いはないです」
今季ここまで8試合に先発している。2勝1敗と星は伸びていないが、注目すべきは規定投球回未満ながら防御率1.51の安定感だ。さらに被打率.168は、佐々木朗希(ロッテ)の.165と同水準。WHIPの0.84も規定投球回達成者でチームトップの東浜巨の0.89とほぼ変わらない。まさにエース級のピッチングを見せている。
なぜ、41歳で自己最速を更新できたのか
最速149キロを記録したことについて、和田は「逆に若い時になぜ出せなかったのかなと思います(笑)。ただ僕としては、より良い球を投げたいという気持ちで練習していますけど、スピードを出すためのトレーニングはしていない」と話す。とはいえ、「新しいことには取り組んでいます」と明かした。
スピードとの因果関係は分からないけど、と前置きしたうえで、1つ口にしたのが「ドライブライン・ベースボール」(以下・ドライブライン)だった。米・シアトル郊外にあるトレーニング施設で、そこで行われる練習法やノウハウが数年前から日本球界でも関心を集めている。ホークスも球団として2019年の宮崎秋季キャンプに「ドライブライン」のスタッフを招いて選手たちのデータ測定や解析などを行った。現在も千賀滉大をはじめ、個人として取り入れているケースがある。