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心が震えた“村上宗隆との真っ向勝負”も…ソフトバンク和田毅はなぜ、41歳で自己最速を更新できた? 本人が語る“奇跡の裏側”
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byJIJI PRESS
posted2022/07/06 06:00
6月19日、日米通算150勝と球団新記録の通算1757奪三振を達成したソフトバンク和田毅
和田も、千賀の取り組むいわゆる先進的と言われるトレーニングに興味を持ち情報を収集。「まずはやってみよう」と挑戦した。和田はかねてより好奇心旺盛な方だ。たとえば2009年の自主トレではカヌーに挑戦した。今ではデータ分析や解析などが当たり前になっているが、10年以上前に鹿児島の鹿屋体育大学を訪れて測定などを行ったこともある。
「ドライブラインのやり方も、たとえば腕だけで投げるのではなく、全身を使うとか。力を入れるタイミングとか色々と勉強になります。それで球が速くなったのか分からないですが、昨年よりも肩の状態は間違いなくいい。それにはつながっているかもしれません」
快速球を投げて足がつってしまった後、千賀にはその対策のための栄養補給法も聞きに行った。年齢が一回りほど離れていようが、自分が興味を持てば年下、年上は関係ない。若手左腕の笠谷俊介からカーブを教わったこともあった。
進化し続ける「松坂世代最後の1人」
その一方で、和田は前時代的と言われがちなトレーニングも大事にしている。それが走ることだ。
「僕が変わらずにいられるのは、若い時から走ることを大事にしてきたから」
つい先日も、一軍が遠征中に福岡で居残り練習をしていた際、ダッシュ系のメニューを繰り返し行っている姿を見た。長い距離を走るのも心肺機能向上などに大切だが、ベテランになればなるほど瞬発系が衰えてくる。齢を重ねてもしんどいダッシュをサボらずやれる選手でないと、長生きすることはできない。
それはピッチングも然り。和田は登板前の取材には「1球1球に気持ちを込めて投げるだけ」と必ず言う。技巧派になることなく本格派を貫いている。常に力を振り絞って投げるから、体のキレを保ち続けることが出来ているのだろう。
松坂世代最後の1人はこれから先、一体どんな姿を見せてくれるのだろうか。「和田毅の奇跡」は、まだまだ終わってほしくない。
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