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格闘技PRESSBACK NUMBER
那須川天心23歳、武尊戦後の独白「ボクシング? まだちょっと余韻に」「やりたいこと…サバゲーかな(笑)」酷評されたメイウェザー戦も糧に
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byTHE MATCH 2022/Susumu Nagao
posted2022/06/23 17:03
6月20日、『THE MATCH 2022』の一夜明け会見に出席した那須川天心。その表情は晴れやかだった
当時からキック界で那須川は高い評価を受けていたが、キックボクサー同士の試合だけでは、どうしても市井の人々を巻き込みにくい。試合の放送もCSのレベルにとどまっていた。
しかしながら従来のキックの価値観から一歩外に出て、他競技に踏み込むとなると話は変わる。那須川はRIZINで大博打に出た。結果、初のMMAはパウンドによるTKO勝ち。さらにマイクで2日後のRIZINへの参戦も直訴し認められると、連戦の疲れも見せず覚えたてのニンジャチョークで一本勝ちを収めた。
挑戦が決まったとき、那須川は筆者に「寝技とか、まだよくわからないんですよね」とこぼしていたが、本当に強いファイターはどんなルールでも強いことを証明してみせた。
メイウェザー戦は「ナンセンス」と酷評されたが…
RIZINが用意した最初の高いハードルをクリアすると、やがてラウンドごとにルールが変わるミックスルールにも挑戦した。
「そんなのは競技じゃない。客寄せパンダにすぎないじゃないか」
ごもっともな意見だ。確かに競技ではないが、市井の人々を巻き込む力を持つこともまた事実だった。極めつけの変化球は、フロイド・メイウェザー・ジュニアとのボクシングルールによるエキシビションマッチに挑んだことだろう。エキシビションといっても“しょっきり”でなく、リアルファイト。つまりエキシビションの形を借りた新たな試合形式だった。
パウンド・フォー・パウンドで“史上最強”と評されることもあるメイウェザーのベストウェイトはウェルター級と、那須川のそれより10kg以上重い。結局、那須川は3度ダウンを奪われる屈辱を味わったが、メイウェザー戦を境にツイッターのフォロワーは急激に増え、武尊のそれを抜いた。
良識あるボクシングファンから「マッチメーク自体、ナンセンスの極み」と酷評された一戦も、「vs世間」という一点では那須川の勝利だった。本人も「確かに知名度の部分ではそうかもしれない」と受け止めている。
「実力はまた別だけど、そこもひとつの目安として捉えていました」
ダウンを奪った左について父は「昔の打ち方に戻した」
正真正銘のラストファイトとなった武尊戦は、キックボクシングの魅力を最大限に見せつける内容だった。