因縁、はたまた偶然か。新チームとして臨む初の公式戦、ネーションズリーグ初戦の相手は韓国だった。

「正直に言えば、嫌です。同じような場面が来れば気になる部分もあるし、でもそう考える時点で悪いイメージになってしまっている、ということなので、できるだけそう考えないようにする。だけど、“考えないように”という時点で、考えていますよね。いざ韓国と（コートで）向かい合ったら、意識するのかな、って思います。やっぱり、それぐらい大きかったので」

　石川が抱く不安とプレッシャーを、眞鍋監督も察していた。

「私は基本的にポジティブ人間ですから。こういう機会はチャンスだな、と思うタイプです。でも、真佑の中に引っかかる、意識するものがあるのならば、どこかで払拭してあげたい。初戦であることを差し引いても、今のチームにとってこの大会で一番大事な試合が、韓国戦だと思っています」

　古賀の対角に入り、スタメン出場した石川は古賀に次ぐ14得点を叩き出した。特に第2セットは、マッチポイントから最後の1点を自ら決める活躍で、セットカウント3対0で勝利を収めると試合後には満面の笑みを浮かべてインタビューに応じた。「勝ててよかった」という素直な言葉と笑顔から、画面越しにも喜びが伝わってきた。

セッターの松井珠己（左）と笑顔でタッチをかわす石川真佑　©FIVB

　ひとつの山を越え、さらに先へ——。だが、勝負の世界にそびえる山は、1つではなくいくつもある。石川は今、新たな壁に直面し、苦しんでいる。

ライバル井上愛里沙の好調ぶり

　韓国に続いて2戦目のドイツ戦も先発出場。しかし、相手ブロックを前になかなか攻撃が通らず、7得点にとどまり、2セットを連取された第3セットから井上愛里沙と交代した。石川同様にアンダーカテゴリー日本代表として豊富な国際経験を持つ井上は、相手のディフェンスをうまく利用し、指先を狙ってタッチを取ったかと思えば、手のひらの端に当ててブロックアウトで弾き出す巧みさが武器でもある。セットカウント0対2から流れを変えるべく投入された期待に応え、フルセット勝ちの立役者になった。スタメン出場した第3戦ドミニカ共和国戦ではチーム最多の26得点を挙げている。

今大会で好調をキープするアウトサイドヒッター井上愛里沙（10番） ©FIVB

　井上の好調さは連勝を重ねる日本にとって大きな武器であるのは言うまでもない。

　ただ、調子の良し悪しは誰にでもある。スターターの位置を井上に代わられたが、サーブやブロック、たとえセットのワンポイントでも果たすべき役割は十分にある。だから落ち込むことなどない——そう言葉にするのはたやすいが、勝負の世界はそう簡単ではない。

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