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“世紀の一戦”を前にした那須川天心の告白「正直、決まったときは不安がありました」… 武尊の存在は「徐々に小さくなっている」
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph bySusumu Nagao
posted2022/06/14 11:03
5月中旬、『THE MATCH 2022』に向けたRISEの合宿に参加した那須川天心。鬼気迫る表情でビッグミットにパンチを打ち込む
合宿での動きを見る限り、天心は早くも臨戦態勢に入っている様子だった。全身から漂う戦闘オーラ、殺気を漲らせた視線……。今回の合宿では上腕に大きなアザを作ってまで選手のミットを持ち続けたRISEの伊藤隆代表は「天心はすでにゾーンに入っている」と評した。
「もういつでも闘えるんじゃないですかね」
その言葉を伝えると、天心は「必然的にそういう姿勢になっていますね」と頷いた。
「常にそういうつもりというか、ずっと追い込みながらやっている感じです」
天心はK-1との対抗戦に臨むために今回初めて実施されたTEAM RISEの合宿を「みんな向かう方向は一緒」と歓迎した。
「非常に意識を高く持ちながら練習できている」
とはいえ、練習は過酷を極めた。みな所属ジムでは自分のペースで調整していると思われるが、こういった環境だとマイペースは許されない。しかも、練習メニュー全体が最初に公表されることはなかったので、必要以上に疲れている選手も見受けられた。
天心も「いつもの練習とは違った刺激がある」と感じていた。
「やっぱり時間が経つにつれ練習の強度は増していくので、疲労はどうしてもたまっていく。でも、なかなかひとりではできない練習も、みんな同じ条件でやっていると自然と追い込めるというのはありますね」
天心が口にした意外な一言「決まったときは正直…」
天心にはキックボクサーとして41戦のキャリアがあるが、今回のラストファイトにはこれまでとは違った何かを感じていた。
「感覚的にはちょっと違いますね。集大成じゃないですけど」
今回、合宿という形でRISEのトップファイターたちが一堂に会していることも感慨深いものがあった。
「なんだか漫画の最終回みたい(笑)。過去に練習で手合わせした人と久しぶりに会ったりしてね」
もう何年も前から熱望されながら、なかなか実現までこぎ着けなかった天心vs武尊。実績から判断すると、過去最大の強敵といっても過言ではない。以前、選手から試合が近づくにつれ、対戦相手の存在は大きくなったり、小さくなったりするものという話を聞いたことがある。
では、天心にとっての武尊の存在はどうなのだろうか?
「うーん……。試合が近づくにつれ、小さくなっている感じはありますね」
――もう呑み込めるような勢い?
「そうですね。そのつもりでというか……」
それから天心は意外な一言を口にした。
「やっぱり決まったときは正直、多少なりとも不安がありましたからね」