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大谷翔平「もっと早くこういう風にできれば…」14連敗を二刀流で断ち切るも恩師マドンは救えず… 番記者が聞いた“無念の言葉”
text by
阿部太郎Taro Abe
photograph byGetty Images
posted2022/06/13 17:02
昨年7月、エンゼルスのジョー・マドン監督(当時)とハイタッチする大谷翔平。同監督の常識にとらわれない起用法が“二刀流覚醒”につながった
「彼のような選手と一緒にできるのは本当に素晴らしいことだ。彼がどれほど野球を愛し、競争心を持っているか。みんな同じようにやりたいと思うが、そうはできない。自分が心がけているのは、とにかく健康を保つように、オーバーワークにならないように確認すること。日々、会話をして注意深く見守って、ベストなやり方を模索している」
昨季、本格的に「二刀流プレーヤー」としての大谷を開花させたのは、マドン監督の手腕も大きかった。登板前後の休養日を撤廃し、制限を解いた。「常識」にとらわれない、自由な発想の2人の気持ちもマッチしたのかもしれない。
マドン監督は今季、何度も言った。「去年、常に会話を続けて成功したんだ。今年も同じ。彼は自分のことを本当に理解しているし、正直で頭のいい男だ。彼をすごく信頼しているんだ」。そして、不振の時は決まり文句のように言った。
「感覚の問題。いずれ、打つよ」
大谷も恩師の気持ちは十分に感じ取っている。なかなか状態が上がらない今季、マドン監督への思いを口にしていた。
「変えたくなったり、打順を落としたくなっても、我慢して、信じて、出し続けてくれている。感謝している」
「もっともっと早くこういう風にできれば…」
その、最大の理解者と言える指揮官が去った。
大谷は解任が決まった日に取材に応じた。「自分自身の調子が上がらず、申し訳ない。お世話になったし、本当に感謝の気持ち」と語ったが、いつまでも感傷に浸るわけにはいかない。まだ、シーズンは折り返し地点にも達していない。毎日のように試合が待ち受けている。
6月9日。連敗を阻止するためにマウンドに立った。
7回1失点の力投を見せ、打っては逆転2ラン。投打で圧巻の活躍を見せて、球団ワーストの連敗記録を自らの手で止めてみせた。
それでも、歯切れのいい言葉はあまりなかった。
「もっともっと早くこういう風に(勝利)できれば良かった」
野球への情熱を分かち合った恩師を救うことができなかった、無念の言葉にも聞こえた。
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