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大谷翔平「もっと早くこういう風にできれば…」14連敗を二刀流で断ち切るも恩師マドンは救えず… 番記者が聞いた“無念の言葉”

posted2022/06/13 17:02

 
大谷翔平「もっと早くこういう風にできれば…」14連敗を二刀流で断ち切るも恩師マドンは救えず… 番記者が聞いた“無念の言葉”<Number Web> photograph by Getty Images

昨年7月、エンゼルスのジョー・マドン監督(当時)とハイタッチする大谷翔平。同監督の常識にとらわれない起用法が“二刀流覚醒”につながった

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阿部太郎

阿部太郎Taro Abe

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 6月6日午後。

 澄み切った青空が広がるアナハイムで、エンゼルスのジョー・マドン監督は巻き返しに闘志をみなぎらせていた。

 ニューヨーク、フィラデルフィアの遠征で惨状を晒し、負の連鎖を断ち切れずに11連敗を喫したチームを鼓舞する姿を、選手たちに示したかったのだろう。早出の若手の打撃練習に付き添い、熱弁を振るった。68歳の名将は両膝に手をつき、打者の数メートル横でスイング軌道を確認し、再び語りかけた。野球への情熱がほとばしった。

 試合前恒例の囲み取材、15分ほどの「マドン・タイム」。弱小と呼ばれていたレイズをワールドシリーズに導き、名門カブスの呪いを解いて108年ぶりに頂点に導いた男の経験則から出た言葉は、説得力があった。

「レイズでのある年、借金が18ぐらいあったが、そこから61勝61敗だったかな。盛り返して、すごく印象に残る出来事だった。こういうことは諦めたら、絶対に起こらない。流れは、急に変化する」

 162試合は長く、険しい。メディアへの応答に「諦めるな、下を向くな」というシンプルなメッセージが込められていた。

 だが、打線が沈黙して球団ワーストに並ぶ12連敗を喫した翌日の7日、マドンの野球への情熱は行き場を失った。

 エンゼルスが解任を発表したのだ。

名将マドンの「データ主義」への抵抗

 7日、球団広報から1通のメールがきた。「15時15分に会見をします」。

 ペリー・ミナシアンGMの緊急会見。その横には、監督代行として指揮を執ることになったフィル・ネビンも座っていた。

 GMは言葉を詰まらせ、時折、目に涙を浮かべながら解任理由を説明した。

「3週間前は思いもしなかったが、変化が、新しい声が必要だと感じた。マドンが大好きだし、彼の人間性が大好きだ。つらいことだが、このチームを前進させるには、(解任が)正しい判断だと、今日の朝、決断した」

 この日の朝にマドン監督の自宅を訪れて、30分間会話をしたという。GMは「彼は理解してくれた」と話したが、実情がその通りだったかと言えば疑問符がつく。

 マドン監督が辞めたタイミングは27勝29敗。借金はまだ「2」で、106試合も残していたにも拘わらず首を切った。

【次ページ】 「少し刺激を与えるため」満塁で敬遠→逆転勝利

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