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舞台の脚本演出も手がける女優が“エンタメ”リングで漏らした本音とは? 松井珠紗22歳のプロレス愛「“ごっこ”で終わりたくない」 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph byNorihiro Hashimoto

posted2022/06/09 11:01

舞台の脚本演出も手がける女優が“エンタメ”リングで漏らした本音とは? 松井珠紗22歳のプロレス愛「“ごっこ”で終わりたくない」<Number Web> photograph by Norihiro Hashimoto

舞台の脚本・演出も手がける女優であり、アクトレスガールズでも活動する松井珠紗

エース選手との対戦後に松井が訴えたこと

 新体制アクトレスガールズでは、団体が開催するリングを使った演劇「アクトリング」から「アクトレスリング」の新人が次々とデビューしている(新人「レスラー」ではないのだが)。まだ教わったことをやるだけで精一杯という感じだが、その初々しさも見どころと言っていい。

 5月19日、新宿FACE大会のメインイベントでは、松井が新人の中でも特に有望な皇希と組み、青野未来&澄川菜摘と対戦した。青野は旧体制のタッグ王者だった選手で、新体制のエース格。澄川はスターダムでデビューし、昨年アクトレスガールズで復帰した。

 そういうメンバーだから、やはり攻防の熱がそれまでとは何段階も違った。「あらかじめ勝ち負けが決まっているパフォーマンス」にしても、やはりそこに“せめぎ合い”のようなものが生まれる。特に松井はいつもより顔つきが険しいように見えた。今年に入ってからの試合、彼女は常に「新しくなったアクトレスガールズで何を見せるか」を意識し、それを言葉にしてきた。

 この試合では、青野が皇希にフォール勝ち。いい攻防が随所にあったが、しかし試合をどう受け止めればいいのかはよく分からなかった。演者たちには確かに魅力がある。しかし試合をやって、その結果が何につながるのかが見えてこない。プロレスの技とフォーマットを使う新しいエンターテインメントの“楽しみ方”がまだ確立していないのだ。アクションシーンだけの映画のようだと言えばいいだろうか。

 それを的確に指摘したのは、試合後の松井だった。これまで何度か公演を重ねたが「試合しました、楽しかったです」の繰り返しばかりでいいのかと訴えたのだ。試合という“点”があるだけで、それが“線”つまりストーリーにつながっていかない。それをよしとしてなのか、主張をすることがない青野のことも気に入らないと真正面から言い放った。オープニングのダンスには参加していた松井だが、エンディングの記念撮影には加わらずリングを後にした。

松井が本音で語った課題とは?

 その真意はどこにあるのか。大会後、話を聞いた。まず確かめなくてはいけなかったのが、このマイクアピールまで含めた「あらかじめ決められたパフォーマンス」なのかということ。そこまで確認したほうがいいと思った。普通のプロレスとはコメントの聞き方からして変わってくるのがアクトレスガールズの「公演」だ。

「あれは自分の本音です。あれを言うために、今日リングに上がりました」

 そう松井は言った。であれば、その前提で話ができる。そして自分がプロレス入りした経緯を踏まえ「私はプロレスファンなので」と松井は続けた。

【次ページ】 「プロレスごっこになってしまう」

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