濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
舞台の脚本演出も手がける女優が“エンタメ”リングで漏らした本音とは? 松井珠紗22歳のプロレス愛「“ごっこ”で終わりたくない」
posted2022/06/09 11:01
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Norihiro Hashimoto
プロレスから離れても、プロレスへの思いは消えなかった。むしろプロレスラーとしての誇りがあふれた。
アクトレスガールズに所属する松井珠紗(まついみさ)は2000年生まれ。中学生時代に劇団に入って演劇活動を始め、18歳で役者兼プロレスラーになった。今では舞台の脚本・演出も手がける。
プロレスを知るきっかけは、オーディションに合格した舞台の座長がプロレスラーの志田光だったことだ。志田の試合を見て、プロレスラーに憧れを抱くようになる。志田と出演したのは「劇団水色革命」の舞台。主宰するMARUも元レスラーだった。そしてMARUに紹介されたのが“女優によるプロレス”を標榜するアクトレスガールズだった。
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団体には演劇をはじめ、さまざまな芸能ジャンルから人材が集まっていた。現在スターダムで活躍する中野たむ、なつぽい、ひめかといった選手たちもアクトレスガールズ出身だ。人前で表現することが好きだから、その点はプロレスでも武器になる。芸能界での苦労が“プロレスの世界で輝きたい”という渇望につながることも。
松井もアクトレスガールズのリングで伸び伸びと試合をしていた。体は大きくないが、プロレスにかけるひたむきさは見てすぐに分かった。SNSのハッシュタグ「#松井かわいい」は本人がつけたもの。脚本・演出を手がけた舞台を見に行くと、重くなりそうな題材をテンポよくまとめ上げていた。
2021年、トーナメントを制してアクトレスガールズのシングル王座に挑戦。三浦亜美(現スターダムの壮麗亜美)とはタッグ王座に挑んだ。他団体参戦のチャンスもあり、いよいよこれからレスラーとしても役者としても脚本・演出家としても花開いていくのだろうと思わせた。
方向転換したアクトレスガールズ
だが、そんなタイミングでアクトレスガールズが大きく方向転換する。昨年いっぱいでプロレス団体としての活動をやめ、今年からはプロレスの技術や試合形式を使った新しいエンターテインメント・パフォーマンスの「公演」を始めたのだ。プロレスという言葉は使わないし、試合の勝敗は事前に決められている(と運営側からアナウンスされている)。
人気やパフォーマンス力などがポイント化され、それをもとに試合の勝ち負けを決められて、選手たちはリングに上がる。サイコロを振って決める「運」ポイントで番狂わせが起こることもある。「競技」ではないから番狂わせという表現でいいのかどうか分からないが。
ただリング上で展開されているのは、呼称こそ「アクトレスリング」だが見た目としては「プロレス」と変わりがない。パフォーマンスであろうとエンタメであろうと、プロレスの技術を身につけた上でしかリングで技を出し、受けることはできない。