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井上尚弥はなぜ“戦慄の秒殺KO劇”を量産できるのか 「たぶん倒せる。急所を狙ってガツンとね」「あの60秒ですごく駆け引きを…」 

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2022/06/09 06:01

井上尚弥はなぜ“戦慄の秒殺KO劇”を量産できるのか 「たぶん倒せる。急所を狙ってガツンとね」「あの60秒ですごく駆け引きを…」<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

ドネアとの再戦で圧倒的な強さを見せた井上尚弥。その破壊力の源とは?

「パーフェクトすぎたという感覚。狙って、計算して入ったパンチです。普段は何で倒したのか覚えてないこともあるけど、昨日は試合が終わった直後もはっきり覚えていました。狙い定めたパンチでしたね」

「ドネアとの第1戦」死闘で感じた感覚

 <名言2>
 どちらが勝つか分からない、ファンの人がゾクゾクするような試合を、自分もすごく求めているんです。(井上尚弥/Number944号 2018年1月18日発売)

 ◇解説◇

 WBSSで衝撃のKOを積み重ね、無類の強さで勝ち上がってきた井上が、最も苦しんだ一戦と言えば2019年11月7日の決勝だろう。

 立ちはだかったのは百戦錬磨のベテラン、ノニト・ドネアだった。対戦前の話題はもっぱら「井上が何ラウンドでKOするか」だったが、2Rで警戒していたドネアの左フックが井上を襲った。右まぶたをカットし、出血。「そこから12ラウンドまで相手が二重に見えていた」と戦いは12Rまでもつれる死闘となった。

 それでもモンスターは、11RでKO寸前となるダウンを奪うなど見せ場を作り、大橋秀行会長も「アクシデントを乗り越えて、いろんな技術を見せ、気迫も見せた。初めて見た人も『これがボクシングか』と喜んでくれたんじゃないか」と、大きく成長できた12Rを称えた。

 試合終了後、セコンドに「楽しかったあ」と本音を見せたという井上。まさに自らが求めていた「ボクシング」だった。

 そこから2年7カ月後に実現したドネアとの再戦では、2回KOという圧倒的な結果によってファンを「ゾクゾク」させてしまうのだから……恐るべきボクサーである。

俺は「たぶん倒せる」という感覚を持って打ってる

 <名言3>
「倒そうと思って倒してない」とか、「倒す時はパンチが当たった感覚がない」という選手もいるけど、俺は「たぶん倒せる」という感覚を持って打ってる。急所を狙ってガツンとね。
(井上尚弥/Number1035号 2021年9月24日発売)
 https://number.bunshun.jp/articles/-/850116

 ◇解説◇

 同い年で交友のあるラグビー松島幸太朗との対談でのこと。松島が「KOする時って、パンチを出す前に『この一撃で倒す』って確信があるの?」という素朴な疑問をぶつけた際の答えだ。井上にしか分かりえない“倒せる感覚”があるからこそ、衝撃的なKOを積み上げているのだろう。

 あまりにも強い井上尚弥。その成長はいつまで続くのか……と戦慄するばかりの一方で、井上本人はプロボクサーとしての立ち位置を冷静に分析している。興味深いのは「引退」についての考え方だ。

「じゃあ、自分の引き際って考えたことある?」

【次ページ】 「負けないのが一番だけどね」

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