ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER

「ジャブが他の選手の右ストレート並。右はその3倍」井上尚弥に挑んだ元世界王者・河野公平の告白… 妊娠中の妻は「井上くんだけはやめて」 

text by

渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

PROFILE

photograph byGetty Images

posted2022/06/05 17:03

「ジャブが他の選手の右ストレート並。右はその3倍」井上尚弥に挑んだ元世界王者・河野公平の告白… 妊娠中の妻は「井上くんだけはやめて」<Number Web> photograph by Getty Images

2016年12月30日のWBO世界スーパーフライ級タイトルマッチ。井上尚弥にボディを打ち込む元世界王者の河野公平さん

打った瞬間に「あれ、もういないのか」

「試合が始まって、最初から見切られている感じがすごくしました。当たると思って打って、相手がその場所にいない。打った瞬間『あれ、もういないのか』という感じ。何度も世界戦をして、あんな経験は初めてでした」

 それでも河野さんは勝利への希望を捨てなかった。「どんなに不利と言われようと、やると決めたからには勝ちにいく」。雑草チャンピオンのポリシーは揺るがない。「他の選手の右ストレートくらい強かった」というジャブを浴びてもひるまず、「その3倍は強かった」という右を打ち込まれても何とか耐え、どうにか井上に接近しようと前進した。距離が詰まった瞬間はがむしゃらに手を出して会場を沸かせた。

 そして5回、ようやく五分に近いラウンドを作ることができた。ワンツーが井上の顔面に当たった。ゴングが鳴ってコーナーに戻ると、セコンドから「いい距離になってきたぞ」と声をかけられた。「これならひょっとするといけるかもしれない」とかすかな希望が体にみなぎった。

 6回、河野さんは前に出た。ワンツー、ワンツーで井上をコーナー付近まで追い込んだ。いや、追い込んだように見えただけで、井上はしっかり河野さんの動きを見て、パンチを打ち込むタイミングを計っていた。河野さんが右を打とうとした瞬間、井上の左フックが炸裂すると河野さんは仰向けにバッタリと倒れた。ここは立ち上がったものの、追撃されて再び仰向けに倒れると主審が試合を止めた。

「2度目のダウンは立ち上がろうと思ったけど、レフェリーが寝てろと合図してきました。ああ、ダメなんだなと。最初のダウンは前に出てカウンターの左フックですね。見えなかったです。攻めていってのカウンター。僕の中では仕方がないという気持ちです」

【次ページ】 ドネアとの第2戦を予想「4ラウンドぐらいで終わるかも」

BACK 1 2 3 4 NEXT
#河野公平
#井上尚弥
#ノニト・ドネア

ボクシングの前後の記事

ページトップ