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「もちろん、バトンは渡る」絶対王者ナダルが認めた“後継者”…男子トップ選手も恐れる19歳スペインの新星・アルカラスってどんな選手?
text by
秋山英宏Hidehiro Akiyama
photograph byGetty Images
posted2022/06/04 11:00
BIG3、ラファエル・ナダルの後継者として今テニス界で最も注目されている才能がいる。スペイン出身の19歳、カルロス・アルカラスだ(写真はナダルとの2ショット、インディアンウェルズにて)
チャレンジャー(下部ツアー)初優勝はナダルが16歳で、アルカラスが17歳。若くして成功を収め、大きな注目を集めたのも同じだ。さらに言うなら、英語が完璧でなく、記者会見では記者の質問で分からない部分を周囲に確認、それでも懸命に言葉を発するアルカラスに17年前のナダルの姿が重なった。
トッププレイヤーの素質を感じさせる「2つの才能」
当時、驚かされたのはナダルのフットワークだった。決勝で対戦したマリアノ・プエルタは「いい足を持っている。すごく速く走る。驚いたよ」と素朴な言葉で感嘆の思いを述べた。筆者は、いささか興奮気味に「翼のついた足」と原稿に書いている。
アルカラスも翼のついた足を持った選手だ。それに加え、フットワークのよさと体の強さ、予測力がある。だから、フォアハンド、バックハンドとも、走らされたときの返球のクオリティが落ちない。この大会で驚かされたのが、まさにその質と精度だった。
決まったか、と思われるボールに追いつき、タイミングを合わせて最後はスライディング、ボールは狙った位置に納まっている。実況のアナウンサーなら「スーパーショット!」と声を張り上げるだろう。そんな場面を何度も見た。
クレーコートではこのショットの巧拙が特に問われるが、今はハードコートでもこのプレーが求められ、実際、多くの選手がこれを得意にしている。ナダルしかり、錦織圭しかり。最新型のフットワーク、現代の男子テニスで必須のプレーだ。
これを高い精度でこなすのがジョコビッチだが、アルカラスの精度もこれに近い。その意味では、フットワークはジョコビッチ譲りというべきか。
ドロップショットの鮮やかさも印象に残る。現代テニスではトップスピンの効いた深いショットが攻撃の起点になることが多く、相手は守備のために大きく後退する。後退の幅が大きい分、ドロップショットが効くのだ。アルカラスはその機を逃さず仕掛ける。男子ツアーを運営するATPによると、アルカラスは優勝したマイアミ大会でドロップショットを試みた77ポイントのうち59ポイントを獲得、77%の成功率をマークしたという。
すなわち、荒削りのようでいてプレーは最新型だ。ナダルと比較されることが多かったが、プレーはナダルとジョコビッチのハイブリッド版、と言ったら褒めすぎだろうか。