腰痛に悩まされていた中学時代から自分の身体を知る、伯母でコンディショニングトレーナーの有吉与志恵から、「腕の振りは横のほうが縦より可動域が広く、スムーズに動くのでは？」といった趣旨の助言をされた。

　宮本には思い当たる節があった。

　中学3年に上腕骨を骨折してから肩が上がりづらくなっていた。それでもオーバースローで投げていたのは、180センチを超える長身だったからで「ボールに角度がつく」と信じていたからだ。だが、故障の影響で腕を上から振り下ろすことができない。高校時代は「イップス」と呼ばれる、精神面から生じる投球障害に陥りそうになった時期もあった。

　そんな背景もあり、有吉のアドバイスをもとにサイドスローで投げてみると、ボールには今まで感じたことがないほどの勢いがあった。

「あれ!?　こんなボール投げられるんや」

　宮本にとってメカニズムの歯車が、カチッと噛み合うような音がした気分だった。

「なんか光が見えて。ずっと『このままだと何も変わらない』と感じながらやっていましたし、思い切ってサイドにしてみようって」

東京国際大時代（写真=本人提供）

「大阪桐蔭・データ班の経験」を自分の投球に…

　変革後すぐにパフォーマンスに直結したわけではなかったが、希望を繋げただけでもサイドスローの生成に没頭できた。

　映像が頭のなかで浮かび上がる。

　高校時代にデータ班として好投手を何人も分析してきた。「自分に置き換えてみたらどうなるだろう？」。自分のデータベースをアウトプットし、ブルペンで確かめてみる。トレーニング方法に関しても、動画サイトで自分の興味のあるメニューを抽出し、身体に合うものを精力的に取り入れていった。

　大学生活も3年が経とうとしていた。この時点でまだリーグ戦デビューは果たしていなかったが、宮本に焦りはなかった。

「ピッチングフォームとか改善の余地はたくさんあったんで。自分の伸びしろに期待するというか、『まだまだできるな』っていうのはオーバースローの時より断然ありました」

　高校時代に最速140キロだったストレートは、147キロまでアップしていた。

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