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日本代表でも見たい「ゲームを変える堀江」“先発1試合”でリーグワンMVPに輝いた堀江翔太(36歳)の止まらない進化とは?
text by
大友信彦Nobuhiko Otomo
photograph byKiichi Matsumoto
posted2022/06/01 11:01
埼玉ワイルドナイツの優勝に貢献した堀江翔太(36歳)。リーグワン初代MVPに選出された
今季の埼玉は「逆転のワイルドナイツ」と異名を取った。
戦った試合は16戦全勝。だが前半からリードを奪い、危なげなく勝ったのはほんの数試合ほど。2戦目の神戸戦は2度にわたって大きな点差をつけられたが、粘り強く反撃し、タイムアップのホーンと同時に途中出場の堀江が劇的な逆転トライを決めてサヨナラ勝ち。9戦目の静岡戦も後半ラストプレーでの逆転勝ち。12戦目の横浜戦は前半3-17と今季のハーフタイム最大の14点差をつけられて折り返した。13戦目は今季リーグ戦全敗に終わった東葛との試合さえ前半は10-10の同点だった。
しかし、ワイルドナイツを相手にリードしているチームは、むしろ怯えているように見えた。そうさせていた「犯人」は堀江だ。
前半の途中から、堀江はおもむろにベンチを出て、軽いジョギングやショートダッシュなど、ひとりでウォーミングアップを始める。リザーブ全員で体を動かすチームのウォームアップとは別の動きだ。
ドレッドヘア。パンツの裾を折りたたんだ「提灯ブルマ」のいでたちで、ゴムまりが弾むようにリズミカルにベンチ横、タッチラインの外側を走る姿はどこからでも目に入る。スタジアムのファンはその姿が目に入れば「来たか……」と悟る。埼玉のファンはそこから急加速の勝利を。相手側はそこからの試練を。そしてその予測は今季の試合では、どちらにとっても現実となった。
後半に入り、堀江が入ったワイルドナイツは一気にエンジンの回転数を上げ、約束されたように攻勢に転じ、当たり前の顔をして逆転勝ちするのだ。その中心にはいつもドレッドヘアがいた。
驚異的な運動量と的確な指摘
そこまでゲームを変えてしまう――その原動力のひとつは、堀江の超人的なまでの仕事量だ。
タックルしてすぐに相手ボールに絡み、奪い取るジャッカル。ラインアウトの正確なスローイングとそこからのモール参加とアタックラインへの参加。パスをしてすぐサポートに入り、スペースがあればキックも蹴り、チャンスがあれば自らトライを取りきる。重量感が看板のFW第1列とは思えない、驚異的な運動量だ。
もうひとつはコミュニケーション力、いいかえれば統率力だ。
「堀江さんは、上手くいってなかった部分を的確に指摘してくれる」と言ったのはフランカーの大西樹だ。今季11戦目の神戸戦を終えたあと、26歳のフランカーは明かした。
「堀江さんは練習のときから口酸っぱく指摘してくれるけど、試合になるとそういうチームルールがついつい飛んじゃうことがある。堀江さんはそういうとき、すぐに指摘してくれる。ベンチからでもです」