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「今、NHLに最も近い日本人」平野裕志朗26歳…2部で活躍も、なぜ“下から2番目の契約”に?「契約社会は差別かというくらいきつい」
text by
和田隆文Takafumi Wada
photograph byKYODO
posted2022/05/26 11:01
“NHLに最も近い日本人”平野裕志朗26歳。今季、NHL傘下の2部でプレーし確かな成長を見せるも、言い渡された契約は…
特に感じさせられたのは、パックを持っていないときの動き。パスをもらったときのために、彼らは相手との間にスティックが届かない絶妙なスペースを空けていた。平野も空けてはいたが、深く考えたことはなかったという。「何十センチの意識」。空け方が違っていた。
上位のラインでプレーすれば、対する相手DFのラインもレベルが上がる。最初の10試合くらいは、ことごとく読まれていた。「今まで通っていたパスが通らない。パックを浮かせて工夫したパスも取られてしまう。コーナーでのバトルでも追い込んでくるのがうまくて、パックを簡単にはじかれた」と振り返ったように、相手のスティックに当てていた。
「嗅覚というか、タイミング。体、パックの位置。全てが大事なんだと。勉強させられた」
同僚「NHLでも通用するシュートを打てるんだから、もっと打て」
ラインを組む味方のFW、対峙する相手DFともに多くのNHL経験者に囲まれてプレーしながら、その「香り」に触れた。その中にあって、同じくらいか、むしろ上だと自負したこともある。「シュートは間違いなく自信があった」とやや食い気味に言って、こう続けた。
「おまえのシュートがチームで一番なんだから、NHLでも通用するシュートを打てるんだから、もっと打てと。試合中にもチームメイトから言ってもらえた。
シュートの速さもそうだけど、やっぱりリリース。他の選手が1、2(のタイミング)で打つものを、1の段階で打てるリリースを持っていると言われたことがある。パックを持った瞬間に打てる。ゴーリーが構えた状態でも反応できないリリースは武器だと思っている」
中距離からきれいに決めるのがスタイル。そこにスパイスを一つ加えた。3月13日のコロラド戦。ゴール前で体を張って相手と戦い、粘って、味方のシュートを「チップして」角度を変え、パックを浮かせて決めた。GKの目線もパックから切り、スキルが詰まっていた。
「シューターというだけでなく、そういったゴールも決められるという証明になった」