「これからもサッカーと共に生きていく」

「あの年は、大会が始まってちょうど50年目だったんだよね。CLではいろんな名勝負があったけど、君が言うとおり、イスタンブールの試合は、世間の人たちにとって最も印象に残る試合になったと思う。

　当時のミランにはスーパースターが揃っていたし、監督をしていたのも、あのアンチェロッティだった。ああいうチーム相手に0－3から同点に追いついて、最後に勝つようなケースは本当に稀だから」

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――イスタンブールの奇跡から、もう10年が経った。サッカー界は激変したし、リバプールというクラブ自体も大きく様変わりしている。そういう変化に対しては？

「たしかに戦術も変わったし、各チームの力関係も随分変わった。サッカーは時代とともに移り変わっていくものだからね。

　それはリバプールも同じだけど、根本にある部分はなんら変わっていないと思う。世界中で人気があるのは今も昔も同じだし、ファンとの絆の強さもまったく変わっていない。その絆こそが、リバプールというクラブのアイデンティティなんだ」

――でも少なくとも、君自身の役割は変わることになる。現役を離れることに、寂しさを覚えたりしないだろうか？

「自分が好きなクラブの選手として、5万人のファンの前に出ていく。その喜びや興奮は、何ものにも代えがたいと思う。

　でも僕は、これからもサッカーと共に生きていく。選手時代と立場は違うけど、新しい仕事も、きっと満足感を与えてくれるはずさ。僕はサッカーも、このクラブのことも、心から愛しているからね」

（田邊雅之＝翻訳・構成）