フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER

北京五輪前、木原龍一は三浦璃来への施術を覚えて…担当指圧師が明かしたペア躍進の“知られざる舞台裏”「彼の人格のおかげです」

posted2022/05/24 11:03

 
北京五輪前、木原龍一は三浦璃来への施術を覚えて…担当指圧師が明かしたペア躍進の“知られざる舞台裏”「彼の人格のおかげです」<Number Web> photograph by 本人提供

木原龍一、三浦璃来と、2人の挑戦を支え続けるトロントの指圧師、青嶋正さん

text by

田村明子

田村明子Akiko Tamura

PROFILE

photograph by

本人提供

羽生結弦、紀平梨花をはじめ、カナダ・トロントを拠点とする日本人トップスケーターを支え続けてきた鍼灸指圧師・青嶋正さん。2019年、診療所に新しくやってきたのは、その後北京五輪などで活躍を見せるとこになるペア日本代表の三浦璃来・木原龍一組だった。身体的な負担を抱えていた2人は、青嶋氏のもとでいかに立ち直ったのか?《全2回の特別インタビュー後編》(全2回の2回目/前編から続く)。

「彼(木原)のコンディションが悪いという話は、前から聞いていたんです」

 それでも青嶋氏の診療所に来るのに半年間かかったのは、彼らがトレーニングをしているオークヴィルはトロントから車で1時間かかるため。当初は近場で対処してくれる診療所を試していたのだという。

「彼らがオリンピックを狙うのはわかってるので、スタートが半年遅れたのは痛かった。間に合わないかもしれない、と思いました」

ペア転向後、“8年間の無理”が蓄積されていた

 当時の木原選手は、MRIやCTスキャンでは分からない身体の痛みを抱え、リフトも満足にできない状態だった。

「来れるのは週に一回だったので、どこが原因なのかという検査で2、3カ月必要でした。でも彼がマッサージを受けて帰ったら往復で4、5時間かかる。何としてでも効果を出してあげなくちゃ、と思ったんです」

 昨日今日始まった痛みではなく、ペアに転向して8年間無理に無理を重ねてきた蓄積だった。丁寧に、消去法で施術していった。

「関節があるべき姿というのがわかっているので、そこに持っていけるかどうか。毎回同じように全身を治療していくと、データが出てくる。足首が良くなっても膝が残ったら、膝に何かある。でも幸い結果的に大きなダメージはないことがわかったんです」

スポーツ医学を学んでいた木原だからこそ…

 すでにパンデミックに入っていたが、トレーニングは続けていたので治療も続けた。特に痛めていた肩は、肩甲骨がほとんど動いていない状態だった。本人の中にも、「自分はこの負傷があるから無理」という意識があったため、それを取り除いてあげなくてはという強い使命感を持ったという。

「肩甲骨が動いていないのに、動かせるところだけでリフトなどをやっているから、壊れる。本人も気が付かなかった、動いていなかったところを全て緩めてあげたら、『あれ? 痛くない』と」

 青嶋氏は一方的に施術するだけでなく、必ず身体に何が起きていたのか人体図を使って説明をし、自分でできる対処法も丁寧に指導する。木原選手はスポーツ医学を学んでいたので理解が早く、課題を与えると必ず次までに実行してきた。そこから上向きになるスピードがアップしたのだという。

【次ページ】 痛みの原因は、「契約で替えられない」壊れかけの靴だった

1 2 3 4 NEXT
青嶋正
木原龍一
ブルーノ・マルコット
三浦璃来
北京冬季五輪

フィギュアスケートの前後の記事

ページトップ