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フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
北京五輪前、木原龍一は三浦璃来への施術を覚えて…担当指圧師が明かしたペア躍進の“知られざる舞台裏”「彼の人格のおかげです」
posted2022/05/24 11:03
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph by
本人提供
「彼(木原)のコンディションが悪いという話は、前から聞いていたんです」
それでも青嶋氏の診療所に来るのに半年間かかったのは、彼らがトレーニングをしているオークヴィルはトロントから車で1時間かかるため。当初は近場で対処してくれる診療所を試していたのだという。
「彼らがオリンピックを狙うのはわかってるので、スタートが半年遅れたのは痛かった。間に合わないかもしれない、と思いました」
ペア転向後、“8年間の無理”が蓄積されていた
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当時の木原選手は、MRIやCTスキャンでは分からない身体の痛みを抱え、リフトも満足にできない状態だった。
「来れるのは週に一回だったので、どこが原因なのかという検査で2、3カ月必要でした。でも彼がマッサージを受けて帰ったら往復で4、5時間かかる。何としてでも効果を出してあげなくちゃ、と思ったんです」
昨日今日始まった痛みではなく、ペアに転向して8年間無理に無理を重ねてきた蓄積だった。丁寧に、消去法で施術していった。
「関節があるべき姿というのがわかっているので、そこに持っていけるかどうか。毎回同じように全身を治療していくと、データが出てくる。足首が良くなっても膝が残ったら、膝に何かある。でも幸い結果的に大きなダメージはないことがわかったんです」
スポーツ医学を学んでいた木原だからこそ…
すでにパンデミックに入っていたが、トレーニングは続けていたので治療も続けた。特に痛めていた肩は、肩甲骨がほとんど動いていない状態だった。本人の中にも、「自分はこの負傷があるから無理」という意識があったため、それを取り除いてあげなくてはという強い使命感を持ったという。
「肩甲骨が動いていないのに、動かせるところだけでリフトなどをやっているから、壊れる。本人も気が付かなかった、動いていなかったところを全て緩めてあげたら、『あれ? 痛くない』と」
青嶋氏は一方的に施術するだけでなく、必ず身体に何が起きていたのか人体図を使って説明をし、自分でできる対処法も丁寧に指導する。木原選手はスポーツ医学を学んでいたので理解が早く、課題を与えると必ず次までに実行してきた。そこから上向きになるスピードがアップしたのだという。