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甲子園の風BACK NUMBER
「『ストップ・ザ・大阪桐蔭』にエントリーさせてください」仙台育英39歳監督が明かす“絶対王者にどう勝つか” カギは「12人いる140キロ超投手」
text by
菊地高弘Takahiro Kikuchi
photograph byTakahiro Kikuchi
posted2022/05/18 11:01
前列左から鈴木晶太(3年・最速143キロ)、古川翼(3年・最速145キロ)、斎藤蓉(3年・最速144キロ)、仁田陽翔(2年・最速145キロ)、田中優飛(2年・最速143キロ)、後列左から高橋煌稀(2年・最速142キロ)、小林寛太(3年・最速141キロ)、渋谷翔(3年・最速143キロ)、福田虎太郎(3年・最速141キロ)、山田脩也(2年・最速144キロ)
「土地、空気、水、言葉。そこにある自然なもののように高校野球を制するための文化を大阪桐蔭は作り上げてしまっている。それも美しいまでに、すべて計算され尽くしています」
かつて大阪の有望選手はPL学園(現在は休部中)に流れていたが、上下関係や寮生活が厳しいと評判だった。そこへ対抗するように、大阪桐蔭は極端な上下関係を排し、選手にしっかり睡眠を取らせるようにした。
絶対王者に挑むことで「人生の学びがあるはず」
また、西谷浩一監督は選手勧誘に熱心なだけでなく、進路面にも注力している。大学、社会人の各チームの戦力を分析し、求められそうな選手を適材適所で送り出す。「入口」だけでなく「出口」にも腐心する結果、高校時代にレギュラーでなかった選手でも卒業後に開花するケースが多い。
須江監督は感服した様子でこう語った。
「全国の多くの監督さんに伺いましたが、高校日本代表監督で預かった選手の体調や起用法について逐一報告を入れてくれるのは西谷さんだけだそうです。その細やかな気遣い、マネジメント力が大阪桐蔭の強さにつながっているのかなと。選手にとっては『自分を高みに連れて行ってくれるチーム』と思うはずです」
今や大阪桐蔭は全国の逸材から選ばれる高校になった。だが、須江監督はまいりましたと兜を脱ぐのではなく、「だからこそ勝ちたい」と力説した。
「絶対的な存在である大阪桐蔭に勝つために選手が準備、実行するプロセスのなかで計り知れない人生の学びがあるはずです。それだけ高い壁に挑むのですから、将来すごいことをなし得る生徒が育つのではないか……という期待がふくらんでいます」
140キロ超え投手が12名…仙台育英の恐るべき投手陣
打倒・大阪桐蔭への熱い思いを聞いた上で、本題に移ろう。須江監督は恐るべきデータを見せてくれた。仙台育英の2~3年生の投手陣19名のうち、12名が最速140キロを超えているというのだ。
昨秋にエース番号をつけた左腕の斎藤蓉は、入学時の最速125キロから現在は最速144キロと19キロも速くなっている。仙台育英秀光中時代から投手指導に定評がある須江監督だが、こんな持論を語った。