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銀次34歳が楽天“代打の切り札”になるまで…Mr.Children『蘇生』に重ねた苦悩の日々「その時がダメでも生き返れるよって」
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byKYODO
posted2022/05/16 17:03
楽天“代打の切り札”として活躍する銀次34歳。ここ2年の苦悩の日々から、いかに復活を遂げたのか?
銀次は今、「状態は前よりもよくなっている」と話した。
前――それは、20年と21年を指している。世界的なパンデミックにより開幕が遅れ、試合も無観客になるなど日本プロ野球界にも激震が走った2年前。銀次は88試合の出場に留まり打率も2割3分6厘と、レギュラーに定着した12年以降で最低の成績に終わった。
苦しんだ2年間「コロナでバーンって落ちたんで」
不振の原因について、当時の銀次は「心に迷いがあったのかな?」と自らを俯瞰していた。練習の質は高めているつもりでも、心と体が正常にマッチしなかったのである。
去年もその余波が銀次を襲った。7月に新型コロナウイルスの陽性判定を受けたことで、体力が大幅に落ちる。比例するようにパフォーマンスも急降下し、いつもの自分を取り戻す前にシーズンが終わった。打率こそ2割8分6厘と前年を上回ったが、出場35試合は12年以降では最も少なかった。
レギュラーとして3割を4度(うち3度が規定打席に到達)。グラウンドに君臨してきた銀次にとって、この2年間は地の底、暗闇に放り込まれたも同然だった。
「体力だったり、コロナでバーンって落ちたんで。今年はそれを戻すことを自主トレからすごく意識してやりました」
ミスチル『蘇生』は「自分に合ってんのかなって」
筋肉の強度を高めつつ、各部位の可動域を広げるために柔軟性も養う。地道な作業を繰り返すことで「前よりもよくなっている」と噛みしめる銀次は、新たな自分を手に入れた。
彼にとってそれは、蘇生を意味する。
あの旋律、歌詞のごとく、銀次は蘇る。
「なんか、自分に合ってんのかなって。どんなに打てなくても……どんだけ打てなくても『次もあるよ』みたいな。その時がダメでも『生き返れるよ』って」
銀次がミスチルの『蘇生』を登場曲に採用したのは13年。そう、楽天が初めて日本一となった年である。25歳だった売り出し中の主力は、34歳となった今年、主に代打として首位を走るチームを支えている。
杜の都に根付く、精神的支柱は揺るがない。
ダメだったら、また蘇ればいいのだ。
何度でも、何度でも。
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