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“藤井聡太16歳に携帯番号を聞いた4年後”のタイトル戦対決… 出口若武六段(27)は叡王戦で「五冠の刺客」となれるか
text by
田丸昇Noboru Tamaru
photograph by日本将棋連盟
posted2022/05/09 17:01
叡王戦第1局の出口若武六段と藤井聡太五冠
藤井五冠は4月28日に行われる叡王戦第1局の前日に記者会見で、「しばらく対局が空き(3月9日以来、中49日)、明日は本年度の初対局。その間、今までと同じように、研究に取り組んできました。ここまでいい内容で勝ち上がってこられた出口六段は、勢いに乗っている手ごわい挑戦者という印象です」と語った。
藤井五冠にとって初の「後輩相手のタイトル戦」
藤井から見て、出口は7歳年上だが四段昇段が2年半遅いので、棋士として「後輩」に当たる。8回目のタイトル戦で、初めてのケースである。「今までと違って新鮮な感じで、気持ちを新たにして臨みたい」と語った。
出口六段は同じ記者会見と別の日のコメントで、「4年前の新人王戦以来、もっと大きな舞台で番勝負できるのは、ひとつ成長できたと思います。藤井五冠は強いの一言に尽きます。序盤、中盤で何とか食らい付いていき、どちらが勝つのか分からないような白熱した将棋を指したい」と語った。
叡王戦第1局の4月28日は、出口の27回目の誕生日。当日は、昨年4月に結婚した北村桂香女流初段も女流名人戦で対局する。「お互いに良い内容の将棋を指せるといいね」と話したという。
藤井五冠は以前、井上一門の棋士を苦手にしていた
藤井五冠は以前、公式戦で井上九段一門の棋士を苦手にしていた。
師匠の井上九段には、2018年3月に王将戦で敗れた(現時点の対戦成績は0勝1敗)。弟子の稲葉陽八段には、初対戦した2017年11月のNHK杯戦で敗れた(同4勝2敗)。同じく菅井竜也八段には、2017年8月の王将戦、2018年9月の棋王戦で連敗した(同5勝2敗)。
藤井は出口六段に4勝1敗と勝ち越しているが、直近の対局だった2020年3月の棋王戦で敗れた。
以上の戦績のように、出口は井上一門が放った藤井への「刺客」になりかねない存在である。
叡王戦第1局の対局場は、前期の開幕局と同じ東京・千代田区「江戸総鎮守 神田明神」。前日には成功祈願の儀式が挙行された。対局者や関係者が参列し、祝詞の奏上や巫女の舞が行われた。両対局者は玉串を奉納し、対局の成功を祈願した。
叡王戦第1局は「振り駒」の結果、藤井五冠の先手番となり、公式戦でよく用いている「相掛かり」の戦型を選択した。