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“藤井聡太16歳に携帯番号を聞いた4年後”のタイトル戦対決… 出口若武六段(27)は叡王戦で「五冠の刺客」となれるか
text by
田丸昇Noboru Tamaru
photograph by日本将棋連盟
posted2022/05/09 17:01
叡王戦第1局の出口若武六段と藤井聡太五冠
出口が飛車を中段で左右に転回する積極策を採ると、藤井も飛車を2筋から9筋に転換し、ダイナミックな戦いとなった。早くも勝負所を迎え、出口は65分と74分、藤井は58分と、両者は3手の間に連続長考した(※本局の持ち時間は各4時間)。
出口は中盤で飛車を切る果断の一手を指し、取った桂で王手角取りをかけた。豪快な手順だった。しかし、実際は誤算に気づいたもので、長期戦にするための手段だったという。対する藤井は中盤で少し自信のない展開と思ったそうだが、次第に有利を広げていった。終盤で厳しく寄せて、出口を93手で下した。
「次はもう少し内容を良くしたい」
藤井五冠は本年度、叡王戦に続いて、棋聖戦、王位戦、竜王戦、王将戦で防衛戦を迎える。その五冠防衛に向けて好発進した。
出口六段は不本意な将棋となり、「次はもう少し内容を良くしたい」と語った。当日は夫人の北村女流初段も女流名人戦の対局で敗れ、出口の誕生日を夫婦の勝利で飾れなかった。
叡王戦第2局は5月15日に、藤井の地元の愛知県名古屋市で行われる。
なお叡王戦は、IT関連企業「ドワンゴ」が主催していた「電王戦」(コンピュータ将棋ソフトと棋士が対戦)を引き継ぎ、2015年に新設された。棋戦名は公募され、最終候補の中から「ニコニコ生放送」のユーザー投票で決まった。命名した方(30代・男性)は、「叡知を争う将棋の頂点にふさわしい」として発案したという。
叡王戦は第3期からタイトル戦に昇格した。第6期からは洋菓子メーカー「不二家」が主催者となった。
ちなみに、明治時代末期に横浜で洋菓子店を開いた不二家の創業者は、偶然にも藤井五冠と同姓で同じ愛知県生まれの藤井林右衛門だった。
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