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濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
筋肉卒業の本音「心が死んでしまう」…慶應卒・才木玲佳の新たな可能性には“クイズ女王”も?「筋肉バカならよかった。でも私はそうじゃない」
posted2022/05/01 11:04
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Takuya Sugiyama
◆◆◆
「キャラが渋滞している」
才木玲佳は、尊敬する伊集院光からそう言われたことがある。
トレーニングで鍛えた肉体が魅力の“筋肉アイドル”。プロレスラーとして東京女子プロレスとアクトレスガールズの2団体で3本のベルトを獲得し、同時に慶應大学卒の“高学歴タレント”でもある。伊集院に認められて、筋肉がまったくアピールできないラジオ番組に抜擢されてもいる。一昨年はボディコンテストのフィジーク部門で東京大会優勝、全国2位という結果も残した。まさに渋滞だ。
だから、3月いっぱいで「筋肉を卒業」すると聞いた時は驚いたが納得できた。彼女の武器は筋肉だけではないのだ。伊集院からは「才木ちゃんは筋肉が凄いんじゃなくて、頑張れることが凄いんだよ」と言われてもいた。けれど、今の偽らざる気持ちはこうだ。
「筋肉という武器がなくなった自分に何ができるのか、今はまだ分からないです。正直、不安はあります」
「心が死んでしまうと思いました」
それでも彼女は、何年もかけて磨き上げてきた筋肉を“卒業する”決意をした。
「筋肉があるから自分のことを知ってもらえた部分は大きいです。でも、やっぱり年齢とともに考え方もやりたいことも変わりますから。才木玲佳といえば筋肉。そんなふうに決めつけたくないし、決めつけられたくないんですよ。
これからは俳優のお仕事も頑張りたいと思っていて、そのためには筋肉のイメージが重荷にもなるんです。役柄が限られてしまうので。アメリカみたいに役者も筋トレしてるのが普通だったらいいんですけど、日本だとそうもいかないですよね。私は特に“普通の人よりデカくなりたい”と思ってトレーニングしてきましたし(笑)。
これまで通りのイメージを守って、筋肉アイドルとしての活動を続けていたほうが安定していたのかもしれないです。でもそれは無理をしている状態。本音を殺さなくてはいけない。それでは心が死んでしまうと思いました」
“筋肉アイドル”時代は「気持ち悪い」と言われたことも
格闘技イベントKrushのラウンドガールになったことからトレーニングを始めた。「女の筋肉に厳しい時代(笑)」で、筋肉アイドルとしての活動には賛否両論。「気持ち悪い」と言われたこともある。「顔と筋肉が合ってない」とも。いや、それが狙いでツインテールにしてギャップを演出していたのだが。
もともと、人と同じことをするのが嫌いだった。慶應大を卒業してから芸能事務所に入るのも珍しいといえば珍しい。
「在学中から芸能活動してるとか、女子アナになるとかならいるんですけどね」
学歴を活かして、いい企業に就職するという人生にはピンとこなかった。それは後からでもできる。安定よりは挑戦。やるならとことん。だから慶應卒なのにアイドルになり、アイドルなのに「ゴリマッチョ」を目指して筋トレに励み、プロレスラーになってチャンピオンベルトを巻いた。アイドルの売名行為と言われたくないから、全部本気だった。本気だったからこそ“筋肉卒業”を宣言する必要もあった。