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「圧倒的に男子が強い」ボートレース界で遠藤エミ“女子初のSG制覇”はどれほどの偉業なのか? 現役記者「運だけでは100%勝てない」
text by
山内翔太Shota Yamauchi
photograph byJapan Motor Boat Racing Association
posted2022/04/19 17:00
ボートレースクラシックで女子選手初のSG制覇を成し遂げた遠藤エミ。現役記者も「生きているうちに見られるとは……」と驚くほどの快挙だった
オールスターでも「女子vs男子」の熱いバトルに注目
そんな遠藤選手ですが、やまと競艇学校(ボートレーサー養成所)時代の勝率は平均以下で、いわゆる“天才型”の選手ではありませんでした。しかしプロに入ってからの成長がすごかった。勝つことができずに1年以上くすぶる新人レーサーも少なくないなか、デビュー4カ月で水神祭(初勝利)を決めていますから。我々には計り知れないほどの努力を重ねてきたんだと思います。
技術面に関して言えば、ターンのスピードは間違いなく女子選手のなかでトップだろうと思います。SGを勝ったから後出しジャンケンで言うわけではなく(笑)、ファンや記者の間でも「男子に勝てる女子」として名前があがる第一人者です。ターンひとつを見ても、男子に負けない体の使い方、トレーニングをしていることが窺えます。
完全な実力勝負の世界でSG制覇を成し遂げた遠藤選手の偉業は、すべての女子選手にとって大きな刺激になったはずです。「女子にもできるんだ」ということが再確認できましたし、体作りの大切さや、体重差というアドバンテージをどう活かすかという意味でも素晴らしいロールモデルになりました。平高奈菜選手や守屋美穂選手をはじめ、女子のトップ選手の間では祝福しながらも「先にとられた」という悔しさがあるはずですし、「どうやって男子を負かすか」という試行錯誤がどんどん増えていくと思います。特に、次のSGボートレースオールスター(宮島、5月24~29日)に出る女子レーサーの意気込みには注目です。
一方で男子のトップレーサーたちも、女子に連続でSGをもっていかれるなんてことはあってはならない、と気合を入れているでしょうね。自分たちが出ているクラシックで優勝されたのは間違いなく悔しかったはずですよ。目の前でボートレースの歴史をひっくり返されて、スポーツ紙全紙が一面や終面で報じたわけですからね。僕も遠藤選手が優勝したことで、直後の仕事量が通常時の3倍になったくらいです(笑)。あらためて遠藤選手のSG制覇は、ボートレース界にとって強烈なカンフル剤になったと思います。
(構成/曹宇鉉)
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