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「ロウキのストレートは凄いよ」佐々木朗希の快挙にマーティンが大喜びした理由…9年前、ベンチに帽子を叩きつけた“完全試合未遂”
text by
千葉ロッテマリーンズ取材班Chiba Lotte Marines
photograph bySankei Shimbun
posted2022/04/17 11:02
完全試合を達成後、マーティンとハグをして喜ぶ佐々木朗希
マーティンは佐々木朗希の事を1年目からずっと気にかけてきた。なにかあるたびに声をかけ、話をした。「基本的にはジョークさ」と言うが、メジャーでも実績豊富な男としてプロとしての在り方を伝え続けてきた。
1年目は「身体が細いぞ。もっと強くならないといけない」と事あるごとに言った。身体が少しずつ大きくなってきた2年目は「もっと下半身を強くしないといけない。まだまだだ」と投手の基本である下半身の強化をアドバイスした。
よく言い聞かせている言葉がある。
「今日という日を楽しみなさい。一日の中で、なにが起きるかわからないのが人生だけど、だからこそ今のその状況を楽しみなさい。今日なにが出来るかを考えて、今日できることを楽しみなさい」
佐々木朗希も、ルーキー時代に優しく語り掛けてくれたマーティンの言葉を胸に焼き付けた。だからこそ、日々を大事に一日と向き合っている。ベストコンディションを維持するために一日のスケジュールをしっかりと組み込み、トレーニング、治療に専念する。食事もすべて身体優先。睡眠時間をしっかりと確保するため出来る限り、早い時間帯にベッドに入る。そして新たに自分のためになることはないかと模索し、研究、トライを繰り返すことで日々、進化を続け、最善の努力をして登板日に備えている。
「オレもベテランだからね。自分の人生経験からも言えるし、メジャー時代などに先輩たちが教えてくれた事でもある。教えてもらったことを、次の世代に伝えることは大事なことだと思っている」
「ロウキのストレートは凄いよ」
佐々木朗希にとって最近でいちばん印象深かったのは、3月27日東北楽天ゴールデンイーグルス戦(楽天生命パーク)で掛けられた言葉だ。今季初先発した試合である。
悔やまれた場面があった。1点リードで迎えた3回裏の守り。1死一、二塁で西川遥輝外野手を迎えた。2ストライクと追い込んでから投じたのはスライダー。甘く入ってしまった。逆転となる2点適時三塁打。結局、この試合は6回を投げて被安打4、3失点。一時、チームは逆転に成功したが、最後はサヨナラ負けを喫した。
試合後、マーティンが声を掛けた。
「ロウキのストレートは凄いよ。簡単に打てるボールじゃない。もっと自分の武器に自信を持って」
佐々木朗希自身も悔やんでいたことであり、どの場面のどのボールを指しているのかはすぐにわかった。自慢のストレートで勝負が出来ず、悩んだ末に投じたスライダーは143キロ。真ん中付近に入り、痛打された。悔やんでも悔やみきれない選択。マーティンは打者の誰もが恐れるストレートに「自信を持て」と励ましてくれた。昨年、27本塁打を放った強打者のアドバイスに目が覚めた。MAX164キロの右腕は原点に戻ることが出来た。