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藤波辰巳vs木村健悟“伝説のワンマッチ興行”実現の舞台裏とは? 後楽園ホールに長蛇の列、敗れた木村は「死んだオヤジに申し訳ない…」 

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原悦生

原悦生Essei Hara

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posted2022/04/14 17:00

藤波辰巳vs木村健悟“伝説のワンマッチ興行”実現の舞台裏とは? 後楽園ホールに長蛇の列、敗れた木村は「死んだオヤジに申し訳ない…」<Number Web> photograph by Essei Hara

左から藤波辰巳、木村健悟、特別レフェリーの上田馬之助。スプリングが外された固いリング上での攻防は、緊張感あふれるものとなった

敗れた木村は涙「死んだオヤジに申し訳ない…」

 1月14日。この戦いを見逃してはならないと、早朝からファンがやってきて長蛇の列を作った。あまりの行列に、2200枚まで売ったところで札止め。1000人近くが切符を買えずに悔しがった。切符を手にしたファンも、少しでもいい席で見ようと会場まで長い列を作った。

 両者の試合前には、若手のスパーリングが19時ごろに行われただけだった。入場曲は流さず、花束贈呈もなかった。猪木もいない。特別レフェリーは上田馬之助が務めた。

 まさかの盛況ぶりに、赤字覚悟だった坂口征二はにんまりとしていた。

 スポーツ紙の話題は全日本プロレスの輪島大士に持っていかれた時期だったが、この新日本プロレスのワンマッチ興行、藤波vs木村は大きなインパクトを残した。

 17分32秒、逆片エビ固め。勝ったのは藤波。木村は粘ったが、ギブアップ負けだった。

 藤波は試合を2人だけで終わりにしたくない。「前田、長州、鶴田、天龍らと戦えるようになる時代が必ず来る」と未来を語った。

 敗れた木村は「情けない。死んだオヤジに申し訳ない……」と涙した。全力でぶつかったが、ポジションを入れ替える夢はかなわなかった。

 19時30分から20時という短い時間に、それぞれのレスラー人生が凝縮された戦いがあった。本当にファンが見たいカードを用意できれば、こういったスタイルの興行も可能だという証明はできた。だが、失敗した際のリスクを考えると、なかなか実行に移せないのもうなずける。還暦を迎える聖地・後楽園ホールで、この先、「藤波vs木村」を超えるインパクトのワンマッチ興行を目にすることはあるのだろうか。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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