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[イチマニアが語る]今江敏晃「WBCで戦い、学んだこと」
posted2022/04/15 07:04
text by
赤坂英一Eiichi Akasaka
photograph by
Naoya Sanuki
「僕にとって、イチローさんは神様です」
真顔でそう言い切る今江敏晃は、子供のころによく「イチローに似てるね」と大人に言われた。「イチローさんがムチャクチャ大好きだったので」、野球でプレーを真似したのはもちろん普段着もイチロー風ファッションで決めていたからだ。
「小学生のころは、三ツ矢サイダーのCMに出てたイチローさんと同じような格好をしてました。ダボダボの七分丈のズボンにナイキのエアマックスに似たスニーカーを履いてね。そのころ流行ったdj hondaの帽子を後ろ向きにかぶって、前髪を垂らしたりもしてたな。僕、それぐらい、マニアックなファンだったんですよ」
プロ5年目の2006年、その「神様」とともに、第1回WBC日本代表に選出。これがイチローとの初めての出会いだ。
「野球人生で一番大きな財産になった出来事です。最初に挨拶したときは足が震えてました。何喋ったか、全然覚えてない」
すっかり舞い上がっていた今江に、イチローは意外なほど気さくに接してくれた。
「普段話しているときは、もうごく普通のおにいさん。結構、冗談も口にされますし、とても人間味のある方なんですよ。グラウンドのイメージとは全然違ってました」
日本代表には“イチロー信者”だと公言しているソフトバンクの川崎宗則もいた。どっちがどれだけ憧れの人について詳しく知っているか、イチロー本人の前で、今江は川崎とムキになって張り合った。
「俺はこういうことを知ってんだぞって宗さんが言うと、僕だってこんなこと知ってますよってアピールの競争。イチローさん、笑ってましたよ。何か、うれしそうに」