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『イッテQ』スタッフが持ち帰った石で世界一を獲得!“水切り”を極めた日本人世界王者30歳が明かす、遠く美しく石を投げるコツとは
text by
齋藤裕(Number編集部)Yu Saito
photograph byYu Saito
posted2022/04/10 11:01
高校までの野球経験を生かした美しいフォームで水切りする橋本さん。フォームは元々のアンダーからサイド気味に変更した
細かく決められたルールも橋本を苦しめた。石の使用条件は「イーズデールで拾ったスレート石」かつ「直径3インチ以内」。
「スレートは角が意外と丸まっていて、指に引っかからず、回転がかからなかったりする。そして重量が少し足りない感覚があり、拾った赤い石を投げようとしたんです。そしたら、『それはスレートじゃないからダメです』と言われ、石の取り替えを命じられました。自分が『イーズデールのスレートに限る』というルールをちゃんとわかってなかったんですね」
――ただ、2投目で着岸し、トスオフには進出しました。
「9人進出して、一気に3投ずつ投げる形式で、自分は3番目に投げることになりました。波も立ってなく、いい環境だったので、『3発当てないと負ける』という危機感を持っていました。でも1投目で50mくらい。2投目も(向こう岸に)届かず58mだったんです」
迎えた3投目、「これは負けたな」と思った橋本が右手に握りしめていたのは、投げるつもりのなかった石だった。
「イッテQスタッフからのお土産で、森川さんからもらった1個のスレートをずっと持ち歩いていたんです。自分の手になじませるよう、イメージトレーニングで使っていて。ただ、もともと本番で使うつもりはなくて……。でも、あのとき自然とその石を選んでいたんです」
モスト・バリュアブル・スロー
――ルール的にありなんですか?
「イーズデールの石ですから(笑)。一回日本に来てますけど、帰ってきたという。逆輸入ですよね。この石で、一発返してやろうと思って」
起死回生を狙った一投は、水面のレーンをまっぷたつに割るように、ど真ん中をまっすぐ突き進む。投げ終わった橋本が右手の人差し指を突き上げると同時に、20回ほど跳ねたスレート石が向こう岸に到達。岸壁に詰めかけた数百人の観客からスタンディングオベーションが起こった。
「終わった後は、『これを投げるために俺は生まれてきたんだな』と。それくらいうまく決まった。モスト・バリュアブル・スロー(MVT)だと思います」