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タイガー・ウッズがマスターズで目指す“サクセス”とは? 壮絶な交通事故から14カ月、静かに即答した「I do.」の意味
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byMatthew Harris/AFLO SPORT
posted2022/04/06 11:00
3日間連続でコースに入り、練習を行なっているタイガー・ウッズ。マスターズ出場への強い意欲を感じさせる
昨年2月の交通事故で右足に重傷を負ったウッズは、あれから今日までの14カ月を「本当にタフな日々だった」と振り返り、手術や治療、リハビリに携わってくれた医療チームの人々、励ましてくれた人々、支えてくれた人々への「感謝の気持ちでいっぱいだ」と、しみじみ語った。
かつて、交通事故からの奇跡の復活を果たしたゴルフ界のレジェンド、ベン・ホーガンの例に触れ、「テクノロジーが発達している今は、ホーガンの時代より格段に優れた医療が受けられる。もし僕がホーガンの時代にあの交通事故に遭っていたら、今こうしてオーガスタ・ナショナルにいることはできなかっただろう」
時代の恩恵を授かった自分は幸運であり、その幸運への感謝を何度も口にするウッズを眺めていると、彼が潜り抜けてきた14カ月の日々は、神にもすがりたくなるほど壮絶だったのだろうと感じられた。
沈黙を守り続けたウッズ
車椅子から松葉杖になり、杖無しでも歩けるようになり、ゴルフができるようになり、昨年12月には「親子大会」のPNCチャンピオンシップに長男チャーリーくんと出場して2位になった。
しかし、乗用カートで2日間36ホールを回る「お楽しみ大会」と4日間72ホールを歩いて回り、世界のトッププレーヤーを相手に戦う公式競技は「まったく異なる」「まずは歩くことが課題」「とりわけオーガスタ・ナショナルは歩いて回るのが最もタフなコースだ」。
ウッズがそう語ったとき、彼が今年のマスターズに出場することは「きっと無理だ」と誰もが思った。
だが、今年3月に入ると、「マスターズの出場者リストにウッズの名前が載ったままになっている」とSNSがにわかに騒々しくなった。
フロリダ州のホームコース、メダリストGCを相棒キャディのジョー・ラカバとともに歩いて回るウッズが目撃され、3月末にオーガスタ・ナショナルの18ホールを長男チャーリーくん、選手仲間のジャスティン・トーマスと歩いて回るウッズの姿がキャッチされると、「タイガーはマスターズにきっと出る」という見方が一気に膨れ上がり、拡散されていった。
しかし、ウッズは沈黙を守り続けた。