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タイガー・ウッズがマスターズで目指す“サクセス”とは? 壮絶な交通事故から14カ月、静かに即答した「I do.」の意味
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byMatthew Harris/AFLO SPORT
posted2022/04/06 11:00
3日間連続でコースに入り、練習を行なっているタイガー・ウッズ。マスターズ出場への強い意欲を感じさせる
4月3日の朝、ついにウッズの言葉がツイッターで発信された。
「今日、これからオーガスタ・ナショナルへ向かい、準備と練習を続ける。戦うかどうかの判断は、戦いが始まるときになるだろう」
数時間後に会場入りしたウッズは、さっそくバック9を回った。
4日には、1992年のマスターズ覇者フレッド・カプルス、そしてトーマスのスリーサムで練習ラウンドを開始。その周囲には大観衆が押し寄せ、他選手たちは「まるでマンデーがサンデー・アフタヌーンのようだ」と驚き交じりの視線を向けた。そして、その誰もが「壮絶なあの事故のことを忘れてしまうほどの回復ぶりだ」と、さらに驚き交じりに語った。
「さすが、タイガーだ」「これぞ、タイガーだ」
ファンの視線はウッズに釘付けになり、まだウッズが初日にティオフするかどうかもわからないというのに、「やっぱり、ウッズはすごい」と世界中が頷いた。
そして迎えた5日の会見で、ウッズは出場に向けて、ほぼ心を決めていることを明かした。彼が口にした「今のところ、プレーできると感じている」「勝てると思う」というフレーズはブレーキング・ニュース扱いで全米へ、世界へと報じられた。
「やりたい練習をやってみて、翌日に肉体がどのぐらい回復するかをテストしている。今のところ、いい具合に回復している。プレーできると感じている。痛みは毎日ある。これまで経験してきたどの痛みより今回の痛みは強いけど、医療チームの人々のおかげで、僕はここで戦える機会を授けてもらったんだと思っている」
タイガーにとっての“サクセス”とは?
会見場から、少々突飛な質問が飛んだ。
「どこまでも戦おうとするのは、自分が積み上げてきたものに、まだ満足していないからですか? それとも、もう満足はできているのですか?」
ウッズの返答は、とても正直だった。
「あと何年できるかわからないけど、今なおプレーできていること。それに(通算)82勝は、いい数字だと思うし、(メジャー通算)15勝も悪くない」
突飛な質問は、さらに続いた。
「あなたにとってのサクセス(成功)とは、何を指すのですか?」
ウッズの返答は、やっぱり正直で、そして謙虚だった。
「今、ここまで来たことが、サクセス。そして、サンデー・バック9で優勝のチャンスに付けることが、サクセス」
本当は、その先にもう1フレーズ、あったのではないだろうか。
「サンデー・バック9で優勝のチャンスに付けること、そして勝つことこそが、サクセス」
しかし、ウッズは最後のフレーズを、あえて言わずに飲み込んだ。しかし彼は、すでに、明らかに「僕はこのマスターズで戦える」と感じており、出場意思の明言までは、もはや秒読み段階だ。
予選2日間のペアリングも発表され、ウッズはルイ・ウエストヘーゼン(南アフリカ)、ホアキン・ニーマン(チリ)とともに初日は午前10時34分のスタート予定とされている。
奇跡のカムバックが生み出す奇跡のサクセス。ウッズだからこそ起こりうる「奇跡に次ぐ奇跡」に世界の期待は高まるばかりだ。