調教師が明かした「必ずしも逃げにはこだわらない」

　そんな手応えに誤りがなかった事を、ジャックドールはその後、すぐに証明する。2勝クラスではスタートからハナへ行くと最後まで後続に迫られる事なく最後は2着に3馬身の差をつけて逃げ切り勝ち。このあたりから“逃げ”という形も確立していった。藤岡調教師は言う。

「その前あたりからはもう来年の春は大阪杯あたりを目指せれば良いな、と考えるようになっていました。そのくらい良くなっていたし、思った通り力がある事は1戦ごとに証明してくれましたから」

　そこで逆算した。大阪杯を使うための臨戦過程としては金鯱賞が良いと考えた。そして金鯱賞を使うためには白富士S、その前のウェルカムSと頂上へ続く経路を探り、そこを歩ませた。結果、ジャックドールの素質と能力が頂上へ続く道を予定通りに登ってみせた。

　そんなジャックドールの武器は何と言っても先行力。5連勝中の近4走はいずれも逃げ切り。自分の形を確立し、金鯱賞は2000メートル1分57秒2のレコードで逃げ切ってみせた。逃げてレコードで駆け抜けられては他の馬が手も足も出ないのも頷ける。しかし、指揮官は「必ずしも逃げにはこだわらない」と語る。

「立ち遅れた時や無理にでも行く相手とぶつかる事もあるでしょう。競馬なので何があるか分からないから、常に色々な形は想定しています」

　調教では後ろから行かせるのもそれらを考慮しての事だろう。

「そうですね。その成果か、実際に番手からの競馬でも勝っています」

「息子で大きいところを勝ちたい」

　大阪杯を前にした最終追い切りもまた同様の形だった。併せた相手を5馬身ほど先行させたが、差す形で最後は1ハロン10秒台の脚を繰り出して先着した。

「前走は時計も速かったし、正直少し疲れが出ました。今回はレース間隔も詰まっているので、まずは疲れを取り、最終追い切りも全体的な時計は速くなり過ぎないように、それでいて最後はしっかり走らせるようにやりました」

　結果「予定通りの調教が出来た」と語った。

　さて、このジャックドールの手綱を取るのは藤岡佑介騎手。父は、管理する藤岡調教師だ。

「息子で大きいところを勝ちたいという気持ちがないと言えば、嘘になります」

　GIの大舞台を父子で制すとなれば、ドラマチック。そんなストーリーが見られるか。4月3日の阪神競馬場に注目したい。

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